F=ディースカウのタイトル・ロール、クーベリック指揮ミラノ・スカラ座、他の演奏で、ヴェルディの「リゴレット」を聴きました(1964年7月、ミラノ・スカラ座での録音)。
このオペラはヴェルディの所謂「中期の傑作」で、密度の濃さと親しみやすさでは、彼の多くの作品のなかでも出色だと思います。
アリアとデュエットをとっても、「悪魔め、鬼め」、「それは心の太陽」、「女心の歌」など充実しているし、オーケストラも多彩であって飽きさせません。
ドイツ・グラモフォンにはジュリーニがウイーン・フィルを振った録音があって、とても素晴らしいものだけれど、このクーベリック盤もいいものです。
まずはF=ディースカウ。相変わらず、声をパッと聴いただけで彼だとわかります。歌い回しもそうだけれど、声そのものが独特。とても理知的でありながら、悲哀をも滲ませる歌唱は彼ならでは。
ベルゴンツィは輝かしく立派であって、とても「オペラ三大ゲス野郎」(あとふたりは誰だ)のひとりとは思えない、爽やかといってもいい歌を聴かせてくれます。じつに安定している。
スコット。先月に彼女の「トラヴィアータ」を聴いて感銘を受け、すっかり彼女を気に入りましたが、ここでも好調。艶やかで可憐な歌唱を余すところなく披露しています。
怜悧なコッソット、重厚なヴィンコは後半をしっかりと締めています。
クーベリックのオーケストラは、歌手にぴったりと寄り添いつつ、痒いところに手が届くような配慮を施しています。そして劇的。テンポの変化は自然でありながら、熱気がこもっており、パンチ力もじゅうぶん。思わず手に汗を握る場面があります。
レナータ・スコット(ジルダ)
フィオレンツァ・コッソット(マッダレーナ)
カルロ・ベルゴンツィ(マントヴァ公)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(リゴレット)
イーヴォ・ヴィンコ(スパラフチーレ)、他
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