夏風邪をひき、この2日間絶不調。鼻水はでるわ喉は痛いわ頭はふらつくわ。けれども暑くてたまらないので冷房はセーブしない。これが元凶だとわかってはいるものの、つけずにはいられない。暑すぎるよ、東京。
夜になるとビールを開ける。
素面ではやってられない。。
そんななか、この言葉をあなたに。
「想像力を抹殺せよ。人形のようにあやつられるな。時を現在にかぎれ」(第7巻29)。
パッパーノ指揮ローマ聖チェチーリア管弦楽団の演奏でマーラーの交響曲6番を聴く。
この指揮者の演奏で印象に残っているのは、ヴェルディの「レクイエム」。中庸なテンポの維持、全体のバランス感の按配、間のとりかたの巧妙さ。そしてなんといっても衝撃的だったのは、「怒りの日」の大太鼓。皮が破れるのじゃないかという強打。ここをこれだけ激しくするのは、ほかにジュリーニ/フィルハーモニア管弦楽団、あるいはトスカニーニ/NBC交響楽団くらいなのではないかと感じた。
そんなパッパーノだからこのマーラー、終楽章のハンマーを心ゆくまでブチかましてくれるのじゃないかと。
そう期待した。
編成は、ヴァイオリンの対抗配置。なので、ダイナミックの強さよりも、アンサンブルの精妙さをとっている。高低のダイナミックよりも広がり重視。たしかに、3楽章まではその効果があらわれている。
ことに、素晴らしいと思ったのは1楽章のラスト近くで、チェレスタとフルートとが絡み合うところ。どの指揮者がやっても幻想的なシーンであるが、この部分をこんなにメルヘンっぽく演奏した例を、寡聞だからしらない。
さて、1発目のハンマーは。
なかなかリアル。ただ、少し遠いか。オケの向こう側で激しく鳴っていることはわかる。ライヴだからだろう、マイクを近づけなかったのだろうか。直後に右から鳴るヴァイオリンは雄弁だけれども、このハンマーだけにに期待していると、なにか食い足りなさが残る。
2発目は、ちょっときた。あえてシンバルを目立たせている。ハンマーそのものはそれほど強くないものの、そこまでの盛りあげ方と、多層的な響きがきいている。この指揮者、演出がうまい。
そのしばらくあとにくる、オーボエのおおらかな表情がなんともいい。そして、管弦楽はぐっと強く強く高揚していく。ただ、ここでも指揮者はいたずらに音を鳴らせるというよりは、副声部にも心遣いをしている。音が適度にバラけていて、混濁することがない。
3つ目のハンマーはない。混沌としたなかで、チェレスタだけが浮き上がり、キラリと光る。指揮者の狙いは、ダイナミックよりもアンサンブルの肌理細やかさを重視したものだと理解できる。
とはいえ、生で聴いたら、また違う趣きになっていただろうことは容易に想像できる。
2011年1月、ローマ、聖チェチリア音楽院でのライヴ録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR