マーラー 第九 バーンスタイン指揮ベルリン・フィルこのコンビによるマーラーを聴くのは30年ぶり。FM放送で聴いて以来である。
70年代後半は、カラヤンとベルリンフィルの最盛期。嫉妬深かったとされるカラヤンが、例外的に大指揮者を立て続けに呼んだ異例の年だった。
ショルティとこのバーンスタインである。奇しくも両者ともマーラーを持ってきた。それぞれ2番と9番、指揮者の持ち味がじゅうぶんに発揮されそうな演目であり、当時の音楽界の事件であった。どちらも興奮して聞き入ったものだ。
それから30年、酸いも甘いも噛み分けた苦節の歳月を経て(笑)、その思い出の演奏は、いまどう聞こえるか。
意外に記憶は確かなもので、細部はほとんど覚えていなかったにも関わらず、全体のフォーマットというかスタイルは、思っていた通り。もっとも、この30年の間にイスラエルやコンセルトヘボウとの演奏を聴いていたということがあるからなのだろう。
当然かもしれないがあれらと似ている。いづれも激しい演奏である。激しいといった観点で順位をつけるならば、一位がイスラエル、二位がこれで、続くのがコンセルトヘボウといったところだ。うろ覚えだが。
とはいえ、このベルリンとの演奏、バーンスタインの粘りのある指揮ぶりとオーケストラの重厚さは、ディスクになったものとしては圧倒的といっていい。
ことに終楽章においてのめくるめく弦のうねり、その多彩さと厚み、そして縦横無尽さは、マーラーの録音では空前のものかもしれない。ベルリン・フィルの機動力がフィルターと通さず露わになっている感じ。
ただ、そんな突出した演奏にもかかわらず、いまひとつのめりこめないのは歳のせいだろうか。かなりの演奏であるが、どうにも絶倫すぎていささか疲れる。
1979年10月、ベルリン・フィルハーモニーでの録音
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