パウロ・コエーリョ(江口研一訳)の「ベロニカは死ぬことにした」を読む。
これは、スロベニアに住む24歳の女が「自分の無力さを感じざるを得なかったから」等の理由により自殺未遂を図って精神病院に入れられ、そこでの出来事を描いた小説。
精神病院ともなると、いろいろな面白い人がいるであろうし、この本でも様々な変人が登場する。が、読み進めていくうちに、今自分がいる世間とそう変りのないことに気がついてしまう。そういう気づきをさせられる本である。
狂っているということの定義とは何か。精確に答えられる人は多くないだろう。
精神科医の考察が文章の合間に出てくる。ことに鬱病に関する意見は多くのページを割いているが、今となっては新味はない(本書は2001年に出版されている)。
ジュリーニ指揮ウイーン・フィルの演奏でベートーヴェンの交響曲3番「英雄」を聴く。
聴く前に時間を見たので、かなり遅いことはわかっていたものの、やはり遅い。1楽章と3楽章を反復しているとはいえ、全曲で59分かけた演奏はそうはないだろう。実際に聴いてみる。遅さがじんわりと身にまとう。これはきっと、ロサンジェルス・フィルとのセッション録音よりも遅いだろうと思っていたが、意外なことが。
ロス盤
1楽章(20:33)
2楽章(17:24)
3楽章(6:30)
4楽章(13:04)
ウイーン盤
1楽章(20:29)
2楽章(17:24)
3楽章(06:55)
4楽章(13:36)
あまり変わらないのである。2つの演奏は、約16年の歳月を経ているにも関わらず。こと「英雄」については、ジュリーニのスタイルは、ロサンジェルス時代に完成されていたと言えるかもしれない。
ただ、実際に聴くと、ウイーン・フィルとのもののほうが遅く感じる。音が重いからだ。よく言えば重厚なのだが、どっしりと腹にもたれるものがある。もちろん、この演奏を会場で聴いたならば感動するかもしれないが、何度も聴き返すのはちょっとつらいかも。
とはいえ、1楽章のラストのトランペットのファンファーレ(もちろん、トランペットは最後まで吹ききっている)のところで、ホルンが前面に出てブカブカとリズムを刻むあたり、ジュリーニが新趣向を打ち出しているところがあったりして、面白い。
晩年になっても自分のスタイルを強く貫き、なおも新しい試みに挑戦する男。ステキだ。
1994年5月17日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ録音。
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