ハンガリー弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲12番を聴きました(1953年9月、パリでの録音)。
ハンガリー弦楽四重奏団のベートーヴェンを、最初からほぼ順番に聴いています。初期もよかったけれど、中期、そしてこの後期に差し掛かり、ますますよくなっているように感じます。
初期の作品が劣っているわけではありません。古典の造形を美しく保った瑞々しい曲は、けっして後期のものにひけをとらない魅力がある。
ハンガリーSQの一見無愛想な佇まいは、後期の作品に、より相性がいいのかもしれません。
1楽章はマエストーソの序奏からアレグロ。演奏は、剛直でありつつも優しい眼差しを感じないわけにはいきません。
2楽章は変奏曲、アダージョで始まります。後期の変奏曲といえば「ディアベリ」を思い出します。あれほどの規模ではないものの、とても充実しており、完成度は高い。そしてどこか、深淵なものを感じます。「ラズモフスキー2番」の、星の煌めきのような。
3楽章はスケルツァンド。ゴツゴツとした感触が、結果的にユーモラスな味わいを醸し出しています。技術的にこれ以上優れた四重奏団はたくさんあるだろうけれど、こんなに滋味深い演奏は多くないでしょう。
4楽章は、ベートーヴェンの中期の長調作品を思わせる、ヒロイックなカッコ良さがあります。ハンガリーSQは精力に溢れていて雄渾。元気が出ます。
ゾルターン・セーケイ(ヴァイオリン)
アレクサンドル・モシュコフスキ(ヴァイオリン)
デーネシュ・コロムサイ(ヴィオラ)
ヴィルモシュ・パロタイ(チェロ)
パースのビッグムーン。
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