ズスケ弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲16番を聴きました(1978年1-2月、ドレスデン、ルカ教会での録音)。
この団体によるベートーヴェン全集の聴取も最後になりました。
16番は後期の他の作品に比べたらいささか小ぶりですが、内容の充実度はやはり高い。ベートーヴェン芸術の最高峰のひとつです。
1楽章アレグレット。相変わらずズスケはコクのあるまろやかな演奏を聴かせます。アンサンブルも緊密であり、ふうわりと美しい。
2楽章はヴィヴァーチェ。人生を駆け抜けるようなスピード感に溢れています。弾かれてみれば、これ以上のものは考えられないくらいに、絶妙なテンポ。
3楽章レント・アッサイ。15番の「リディア旋法」や13番の「カヴァティーナ」に比肩するであろう崇高な音楽。ズスケの呼吸はたっぷりと深く、とても滋味があります。
4楽章アレグロ。この楽章には、ご存じのように「ようやくついた決心(Der schwergefasste Entschluss)」「そうでなければならないか?(Muss es sein?)」「そうでなければならない!(Es muss sein!)」という言葉が書きこまれています。
これには、己の人生を振り返ったという感慨ではないか、あるいは家政婦との給金のやりとりではないか、などの説がありますが、どちらにせよ音楽の素晴らしさは変わりません。
カール・ズスケ(第1ヴァイオリン)
クラウス・ペータース(第2ヴァイオリン)
カール・ハインツ・ドムス(ヴィオラ)
マティアス・プフェンダー(チェロ)
パースのビッグムーン。
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