クレツキ指揮バーデンバーデン南西ドイツ放送交響楽団の演奏で、ベートーヴェンの交響曲3番「英雄」を聴きました(1960年代前半の録音)。
クレツキのベートーヴェンと云えば、後年にチェコ・フィルと入れた全集が有名だけれど、これはその比ではないくらいにスゴいという一部の評判を伝え聞いていたので楽しみにしていました。
冒頭から、いい鳴りっぷり。空気を切り裂くように鋭角的なヴァイオリン。それを包み込むように厚みのある中低弦。端正にして凛とした木管。柔らかくて芯のある金管。
とりわけ、2楽章は素晴らしい。中くらいのテンポでもって淡々とした足取りなのだけど、響きがなんとも濃厚。まんなかを過ぎたあたり、弦楽器に乗って歌うファゴットは哀歌と言うべきものだし、そのあとに続くホルンの叫びの悲痛さといったら!
この楽章に触れて、久しぶりに感銘を受けました。
続くふたつの楽章は、ふくよかにして立体的。なんとも楽しい。
50分弱、充実した時。
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