マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団・他の演奏で、ベルリオーズ「レクイエム」を再び聴きました(1978年8月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音)。
この曲を取り出すのは、先々月にフレモーの指揮で聴いて以来。あの演奏は、柔らかいフォルムを保ちつつ堅実な造形を彫刻しており、なおかつ、ときにはスペクタクルな要素も前面に押し出した演奏であって、大変感銘を受けました。
それを念頭に置きつつ、このディスクを今日再び聴くまで温めておいてみました。
当演奏は、この時期のマゼールらしく、筋肉質。音は総じて短く刈り込まれ、切っ先は鋭利。ただこの録音においては、残響がことのほか豊かに取り入れられていて、ずいぶんとカドが取れているように感じます。それはこうした合唱を伴う曲の性質上、妥当な仕掛けなのかもしれません。
くだんの「怒りの日」においては、ことさらスペクタクルな味を強調しているわけではない。むしろ、男声合唱のふくよかで広がりのある響きに陶酔させられます。強い音も、弱い音も安定している。女声合唱もよい。密度が濃く、透明感があります。いずれも、オーケストラとの音量のバランスがうまく均衡している。クリーヴランドの合唱団は、ことこの演奏に関して言えば、マーガレット・ヒリスを擁したシカゴ交響合唱団にひけをとらないと思います。
「サンクトゥス」におけるテノールはとてもリリカル。知的でありつつも、可愛げがある。大人の天使がいるとしたら、こんな風かな。
「サンクトゥス」と交互に演奏される「ホザンナ」を、私は『六甲おろし』のフーガ、と勝手に呼んでいるが、秋の雲のようなたっぷりとした厚みがある。ここでもやはり、合唱のうまさが際立っています。
やはり、この曲は素晴らしい。
ケネス・リーゲル(テノール)
クリーヴランド交響合唱団
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