ルイ・フレモー指揮バーミンガム市立交響楽団・他の演奏で、ベルリオーズの「レクイエム」を聴きました(1975年の録音)。
弦楽器群25型、ティンパニ16、シンバル5対、タムタム4、合唱200名等に加え、別動隊のオーケストラを要する、これはベルリオーズ畢生の大作。
フレモーの演奏は一度だけ聴いたことがあります。読売日響とのベートーヴェン「5番」他、旧杉並公会堂での演奏会。それはとても端正でありつつ、マスの迫力にも欠かないもので、いまでも記憶の片隅に残っています。
その彼によるベルリオーズ、最初の「キリエ」は鎮魂ミサでありながら、あたかもファウストの悪徳のようなものを感じさせ、背筋がゾワゾワします。
「怒りの日」では曲の半ばから別動隊が加わり、音の大洪水。これだけの音が一気呵成に流れる効果は、マーラーの第8と引けを取らないものであり、またそれとは異なる感銘もある。よって、この編成は必然。
男声合唱がこのうえなく生々しい「哀れなるわれ」を経て、「みいつの大王」で再度別動隊出動、こちらは快速テンポ。バーミンガムのコクのある響きに陶酔。「われをたずねんとて」はコーラスのみ。厚い響きが沁みます。
トリッキーなリズムが面白い「ラクリモサ」では、フレモーは合唱から瑞々しい抒情味を引き出していて聴きごたえがあります。それにしても5対のシンバルの破壊力たるや!
シューマンが激賞した「奉献唱」は、なめらかな弦楽器と清澄な合唱が溶け合い、夢心地。
「サンクトゥス」は、この曲で唯一テノール独唱が登場する曲。ティアーの声は広々としていて輝かしく、湿った雰囲気は微塵もないところが痛快。
中間部の「ホザンナ」はベルリオーズ版「六甲おろし」。年代からすれば、古関裕而さんがベルリオーズを流用したと考えられるけど、定かではありません。毅然として勇壮。
「神の子羊」は曲のもつ陰影の深さを、注意深く掘り下げた演奏であり、感銘を受けました。
全体を通して、素晴らしい演奏。録音もいい。
フランスのレクイエムと云えばフォーレばかりが名高いようですが、私はこちらをとります。
ロバート・ティアー(テノール)
CBSO合唱団(合唱指揮:ゴードン・クリントン)
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