村上春樹の「村上ラヂオ2:おおきなかぶ、むずかしいアボカド 」を読む。
これは、村上が10年ぶりに「anan」に連載したエッセイの文庫版。
ところどころ出てくるうんちくが面白い。シーザーズ・サラダの語源について、ビートルズのプロデューサーが書いた彼らの伝記について、昔ジャイアンツにいたデイヴ・ジョンソンのコメントについて、ジョルジュ・シムノンがセックス中毒だったことについて、等々。
こういうのを読むと、丸谷才一を思いおこす。彼は言うまでもなく、エッセイの名手であった。彼ほど、話題を深く掘り下げているわけではないけれど、逆に軽い味わいが村上にはある。
定期的に書いてほしいものだ。
ロットの歌で、プーランクの歌曲を聴く。
半音階のメロディーに乗って、美しいフランス語が飛翔する。ロットの声は、ときには羽毛の軽やかさ、ときには濃厚な官能性を発揮する。
プーランクは、アカデミックな教育を嫌い、すべてをプライベート・レッスンで音楽を学んだとされている。
母が弾くロマン派の音楽、街で耳にするシャンソン、コンサートで聴いたドビュッシーやストラヴィンスキー。それらを吸収して、自らの音楽を「素敵で悪趣味な音楽」を言った。
アポリネールの詩による「モンパルナス」は、3分強の歌だが、作曲に4年を要した。都会の深夜の湿った空気が纏うような、幻想的で深い歌である。
フェリシティ・ロット(S)
パスカル・ロジェ(Pf)
1996年2月、スイスでの録音。
バカンス。
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