新宿区民オペラの制作によるチャイコフスキーの「イオランタ」、プッチーニの「トスカ」公演に足を運びました(2019年3月2日、新宿文化センター小ホールにて)。
「イオランタ」は全曲で約90分、「トスカ」は抜粋で約60分の公演でした。
【イオランタ】
上演されるのが珍しい作品ですが、お話も音楽もとっつきやすく、これならば予習なしでも楽しめたかも。
以下、あらすじです。
『生まれながらにして盲目の王女は、自分の目が見えないことを知らない。何故ならば、周囲が気を使って「光」を連想させる言葉を用いないから。
でもある日、ひとりの騎士が王女の前に現れ、彼に自身が盲目なことを知らされる。それを聞いた王は激怒するが、彼女は手術を受けることを決断。無事に成功し、騎士と結ばれる。』
舞台装置は真ん中にテーブルをひとつ置いただけ。シンプルだけどじゅうぶんであって、歌と演技に集中することができました。
イオランタ姫は細くて華奢な声。声量も控えめながら、可憐でいかにも深窓の娘といった雰囲気を醸し出していて素敵。
騎士(伯爵)は高音がよく伸びていて綺麗だし、なかなかに力強い。聴きごたえがありました。
医師は控えめながらも安定したバリトンの声でもって、この役柄が物語のひとつの核であることを改めて感じさせられました。
乳母もお話の前半のキーとなる存在。スプーン一杯の愁いを纏った深い声は印象に残ります。
ラウラは出どころは少ないものの、澄んだ声と海のような色のドレスとが溶け合っているようで、清々しい味わいがありました。
オーケストラは木管楽器が冴えていた。とりわけ、ファゴット、クラリネット、オーボエがいいように感じました。
弦はもうちょっと。難しい曲なのだろうな。
ただ、全体を通してリズムはキッチリ合っていたので、安心して聴くことができました。稽古がモノをいったのでしょう。
イオランタ姫:高津桂良
レネ王:普久原武学
ハキヤ医師:町村彰
伯爵:飯沼友規
公爵:上田誠司
乳母:中島麻紀子
ブリギッタ:高橋初花
ラウラ:栗田真帆
指揮:榛葉光治
【トスカ】
タイトル・ロールがよかった。ドラマティックな歌い回しはカラスを思わせるところもあり、音程も安定していた。彼女の歌で全曲を聴いてみたいものです。
こちらも簡素な舞台装置でしたが、スカルピアを刺殺したときのナイフの血糊や、トスカが飛び降りるシーンなど、よく工夫されていて楽しめました。
それにしても、このオペラを60分に凝縮して聴かされると、いかに甘いメロディーに彩られているかがわかる。陶酔した。プッチーニがオペラの分野でもっとも才能を発揮したならば、チャイコフスキーはやはりバレエなんだなと。そんなことを感じました。
トスカ:飯島由利江
カヴァラドッシ:熱田鷹丸
スカルピア:川ノ上聡
スポレッタ:宇佐美洋一
指揮:福田夏絵
新宿オペラ管弦楽団
新宿オペラ合唱団
練習ピアニスト:岩崎能子、竹之内純子、松井理恵、河野真有美
演出:園江治
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