オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏で、ブルックナーの交響曲4番「ロマンティック」を聴く。1878/80年のノーヴァク版によるもの。
オーマンディのブルックナーを聴くのは初めて。ライナー・ノートによると、彼のブルックナーはコロンビアに録音したこの4番と5番のほかに、1935年にミネアポリス交響楽団と録音した7番、そして1968年にRCAでフィラデルフィアと同じく7番を録音していて、正規録音はこの3曲だという。
この「ロマンティック」という曲は、ホルンがよくないとどうにもならない音楽だが、このフィラデルフィアのホルンはとても素晴らしい。いろいろなオーケストラでこの曲に親しんできたが、これほどのホルンを聴いたのは初めてかもしれない。
1楽章の冒頭は、軽やかで柔らかい。淡いヴィブラートがかかっており、文字通りロマンティック。
3楽章がまたいい。ホルンは1楽章と同様に闊達、速い部分の後半ではトランペットとフルートが軽快に絡んでくる。それはあたかも、天空を舞うよう。
オーマンディのテンポは中庸。響きは全体的に明るめなので、ウイーンやドレスデンのオーケストラによる演奏に親しんでいる向きには違和感があるかもしれない。
重厚さはないぶん、副声部までクッキリと聴こえる見通しのよさがこの演奏にはある。
2楽章は木管の合奏、弦合奏ともにたっぷりと鳴っているが、響きがシャープなので音楽そのものはシリアス。特に前半は、寂寞ささえ感じる。
4楽章もよく鳴っている。升目を隙間なくいっぱいに埋めた楷書。輝かしさのなかにひと匙の憂愁。
5番を聴くのが楽しみだ。
1967年10月、フィラデルフィア、タウン・ホールでの録音。
水上バス乗り場。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR