D・カーネギー(香山晶訳)の「道は開ける」を読む。
この著者のことを長らく、鉄鋼で財を築いた人物だと思っていたが、まったく別人物であるとのこと。このデール・カーネギーは教師にして作家、また自己啓発の研修プログラムを開発した人物である
本書に明記されていないが、「道は開ける」は1944年から1948年までに書き継がれた作品のようだ。それ以来世界中で読まれており、邦訳だけで300万部売れたらしい。
確かにそれだけのものはある本。感服しないわけにいかない。
ここでは、著者がさまざまな人にインタビューを試み、実際に起きたトラブルとその対処法をヒアリングし、まとめて章立てしてある。それらの対処法は普遍的に通じるものであるので、いまあなたが抱えている悩みを解決する手立てになるかもしれない。
本書の言葉のほんの一部を引用する。
「過去の出来事に後悔しすぎない」、「一日を区切りに生きる」、「悩みは紙に書き出しそれについて自分にできることを書き記す」、「靴がないとしょげていた 両足もがれたその人に 通りで出会うその前は」、「どうしたら他人を喜ばすことができるか毎日考えればうつ病は治ります」、「もし私たちが悩みや不安を感じるなら神にすがろうではないか」、「我々の敵の発見は我々に関する限り自分自身の意見よりも真実に近い」、「不眠症について悩むことが睡眠不足以上に有害なのだ」、など。強く誠実な言葉に心打たれないではいられない。
著者は言う。「古いことわざの多くを活用できれば、ほとんど完全な人生を送ることができよう。本書などまさに無用の長物と言ってもよい」。その通りだと思う。
そういうこともあり、本書の形式を実際に起こったことの具体例を示すことに拘ったのかもしれない。とにかくいろいろなパターンがある。
繰り返し読むに足る、というよりも繰り返し読むべき本だろう。
オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏で、ブルックナーの交響曲5番を聴く。
先週に聴いた4番がとてもよかったので、これも期待した。果たして、よかった。とくに、滔々とした流れのなかに輝かしい響きを湛えた2楽章、そしてフーガにおける音の圧力と奏者のテクニックのキレがすさまじい4楽章。緻密なヴァイオリンと豪壮なチェロ、濃厚なホルンには、圧倒された。
全体を通して、ゆったりとしたテンポを基調にして、各パートを思う存分鳴らせた清々しいブルックナーである。カラヤンの演奏もたいがい鳴らしているが、アメリカのオケのカラッとした響きが新鮮なのである。
ブルックナーというとドイツ、オーストリア、あるいはチェコ、オランダのオーケストラの手によるものが多い。もちろん素晴らしい演奏も少なくないが、ときには違う色のブルックナーも聴きたい。
シカゴはショルティで全集を作っているが、ドホナーニのクリーヴランドによるものは途中で頓挫した。ボストンやニューヨーク、フィラデルフィアも全集はやっていないのじゃないか知ら。フィラデルフィアはサヴァリッシュでやったら面白かったと思うのだが。
1965年4月、フィラデルフィア、タウン・ホールでの録音。
動物にも春。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR