青山通の「ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた」を読む。
著者は小学校のころ、ウルトラセブンの最終巻をテレビで観て衝撃をうける。あの強かったセブンが、アイスラッガーをまともに放てないほど疲労困憊し、怪獣パンドンに苦戦する姿に。そして、ラストにモロボシ・ダンが自分はセブンであることを告白するシーンで。
告白のシーンで、リパッティのピアノ、カラヤンの指揮によるシューマンのピアノ協奏曲が鳴らされることは、今では有名な話。しかし当時は、インターネットも普及していないから、演奏者が誰という前に、どんな曲であるかもなかなか分からなかった。
偶然から曲名を知った筆者は、さらに誰の演奏なのかを探し始める。なけなしの小遣いをはたいて、ルービンシュタイン/ジュリーニ盤、ケンプ/クーベリック盤、リパッティ/アンセルメ盤を聴く。どれも違い、途方にくれる。
時を経て、やがて中学3年生になった筆者は、友人宅で友人の兄のレコードを聴かせてもらい、とうとう溜飲を下げる。リパッティのピアノ、カラヤンの指揮によるものだったのだ。
情報化時代と言われる現代においては、このような情報はすぐに入手できるだろう。でも、なんの手がかりもないところから長い年月をかけて探り当てた喜びは格別だろう。そして、こうして本のネタにもなり得る、と。
ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の演奏で、ブルックナーの交響曲9番を聴く。
ジュリーニによる「第九」のLPが立て続けに発売されたのは、1970年代後半のころである。
レコード・アカデミー賞をとったマーラーやドヴォルザーク、シューベルト、そしてこのブルックナーはシカゴ交響楽団と、ベートーヴェンはロンドン交響楽団とのもの。とくにシカゴとのものはすべてが良くて驚いたもの。レーベルがDGとEMIとに分かれていたので、「第九」シリーズを狙ったわけではないと思われるが、それにしても壮観。
このブルックナーは、もっぱら図書館で借りていた。借りては聴いて、返してはまた借りた。何度聴いたことだろう。
演奏は今もって最上級。鳴るべき音は全てキッチリと鳴り切っており、爽快この上ない。
アドルフ・ハーセスとデイル・クレヴェンジャーが率いる最強金管群団は絶好調。これでもか、というくらいに響かせている。それでも金属的な冷たさを感じないのは、EMIのドロッとした録音のせいかもしれない。2楽章の中間部でホルンが強く鳴るところは今聴いてもショッキング。
弦楽器群も緻密でパワーがある。キザミはクッキリとして明晰、歌うところはじつに伸びやか。
ジュリーニは後年にウイーン・フィルとシュトゥットガルト放送交響楽団(映像)とでこの曲を収録しているけれど、思い入れもあって、このシカゴ盤を一番気に入っている。
1976年12月、シカゴ、メディナ・テンプルでの録音。
海辺。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR