ナガノ指揮バイエルン国立管弦楽団の演奏で、ブルックナーの交響曲7番を聴く。
この指揮者の演奏を多くきいているわけではない。記憶が確かなら、「トゥーランガリラ交響曲」と「ファウストの劫罰」とのふたつのディスクだけ。どちらも大曲であり、全体をよくまとめているとの印象があるが、その程度に留まっていると感じ、正直言ってあまり感銘は受けなかった。
しかし、このブルックナーは掛け値なしに素晴らしい。いままで聴いた7番のなかでもトップクラスにあげたい。
このオーケストラはバイエルンのオペラハウスの常駐オケで、コンサート活動は基本的に年に6回の定期演奏会しか行わない。サヴァリッシュ時代はもっぱらオペラ中心だったし、C・クライバーはコンサートでも使ったが、彼のことだから演奏頻度は少なかった。
実演では、クライバーの東京公演でブラームスなどを聴いたが、指揮はともかく、オーケストラはまあ渋くて安定感があるな、くらいにしか思わなかった。
ところが、この演奏ではオーケストラがめっぽう素晴らしい。弦楽器の艶やかな音色、フルート、オーボエ、クラリネットの毅然とした硬めの音、そして輝かしくもまろやかな金管楽器群。まるで、ブルックナーを演奏するために集められた団体のよう。ドレスデン・シュターツカペレやウイーン・フィル、ミュンヘン・フィルもかくやと思わされる。ロケーションが残響の多いところなので、そのせいもあるのだろう。パーテルノストロのブルックナーも残響の多い録音だったが、こちらはもっと見通しのよい録り方をしている。
ヴァイオリンの対抗配置を採用していると思われ、どちらかと言うと重心がやや高い。それが狙いのひとつでもあるのだろう。全体が透明感のある明るい色調になっている。
個々の奏者の技量は高い。楽章の合間に会場の咳が聞こえなければ、セッション録音だと思うだろう。拍手は収録されていない。
ナガノの指揮はとても緻密。隅から隅まで目がゆき届いており、強い全奏の箇所でも音が塊にならず、パラパラとほぐれている。細かい音も全体にしっくりと馴染んでいるから、流れに淀みがない。
テンポは全体的に、こころもち速め。アゴーギクはほとんどきかせていない。
1楽章と4楽章で、短い経過句のようなところのファンファーレがいくつかあるが、そこで思い切って音量を落としている。それがとても効果的で、全体のいいスパイスになっている。2楽章の頂上は、ティンパニ、シンバル、トライアングルつき。
ナガノはブルックナーをこのオーケストラと他に4番と8番を録音しているそう。機会を作って聴いてみたい。
2010年9月、ベルギー、ゲント・カテドラルでのライヴ録音。
すがすがしい。
在庫がなく、ご迷惑をおかけします。
5月下旬に重版できる予定です。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR