スティーヴン・コヴァセヴィッチのピアノで、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」を聴く(1969年の録音)。
これはとても華やかな演奏。同じCDにカップリングされている1番の協奏曲と口当たりが似ている。録音年代はけっこう違うのだけれど、彼のスタイルというものがすでに(このヘンデル・ヴァリエーションの録音時、20歳代後半)確立されていたのかもしれない。
音符は物理的にはひとつひとつ独立したものだと思う。ハーモニーは別とすれば、メロディーやリズムの打鍵は、音符がそれぞれ単独で聴こえるほうが気持ちがいい。
この演奏は、それを兼ね備えたもの。いっこの音符が明瞭に、はっきりと聴き取れる。マッシヴな音も割れない。重量感たっぷりで、クッキリと冴えた音が鳴り響く。
各変奏は表情豊かで、ノーブルな雰囲気を兼ね備えている。
最後の変奏とフーガは、高い技量を駆使して、スケール大きく弾き切っている。
この曲の、多くの名演奏のひとつ。
パースのビッグムーン。
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