ウィルヘルム・ケンプのピアノで、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」を聴きました(1957年1月、ハノーファーでの録音)。
これは、とても温かみのある演奏。テンポは中くらい。
録音当時、ケンプは61歳。さほど高齢ではないのですが、テクニックに水際立った鮮やさがあるわけではありません。たとえば、最初のテーマのトリルは、滑らかではない。でも、変奏が進んでいくに従って、だんだんとエンジンがかかってくる。そして、味わいが増していくのです。
各変奏によって、キメ細かに表情を変えます。ときには重みをたっぷりと持たせて踏みしめるように弾いたり、ときには鳥たちが一斉に飛翔するようにパッセージを煌めかせたり。
輝かしい最後の変奏まで丁寧に積み上げられた威容は、フーガでついに全貌をあらわします。
ゴツゴツとした暖かいピアノです。
パースのビッグムーン。
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