ロストロポーヴィチが1955年に行ったバッハのライヴ演奏を聴く。
ロストロポーヴィチは、セッションでは1992年に無伴奏を録音している。すでに60歳半ばの頃であり、これが最初で最後のセッションとなった。
こちらは、まだ聴いていない。聴いた友人からは「速くて味わいに乏しい」と伝えられたが、どうなのだろう。
このライヴ演奏では、彼の豪胆なチェロの響きを心ゆくまで堪能できる。
一般に、チェロの音はヴァイオリンに比べると小さいようだ。それは、例えばブラームスの二重協奏曲を生で聴くとわかる。たいがい、チェロの音はヴァイオリンよりも一回りくらい小ぶりである。ヴァイオリン奏者がそのあたりに気をつけないで弾くと、それはますます明瞭になる。
ロストロポーヴィチの生演奏を聴くことはできなかったが、彼の音は大きかったのじゃないかと想像する。このバッハを聴くと、弦に弓をこすりつける圧力の強さが時空を超えて伝わってくる。彼ならば、相手がオイストラフであろうとパールマンであろうと、決して負けない音を発していたのではあるまいか。
そんなわけで、このバッハは力強い。テンポは全体的に速めであると思うが、音色がとても厚くて密度が濃いし、テクニックは目覚ましく、弛緩するところが全くない。重戦車がうなりをあげながら高速で疾走するかのよう。
この曲に関しては、どちらかと言えば牧歌的な、ゆったりした演奏が好みである。よって、このディスクを頻繁に聴くことはないと思うが、強烈なインパクトを感じたので、ずっと記憶に残ると思う。
1955年5月26,27日、プラハ、ルドルフィヌム(第10回プラハの春音楽祭ライヴ)。
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