ヌオーヴォ四重奏団の演奏で、ドビュッシーの弦楽四重奏曲を聴きました(1985年4月、フィレンツェでの録音)。
これは言葉遊びです。
ラヴェルは漱石、ドビュッシーは鴎外。
前者は口当たりがよく、奥も深い。後者はややとっつきづらいけれども、聴くたびに味が出る。とっつきやすいから通俗的と見做される(今東光の漱石評)ことがあるけど、ラヴェルの素晴らしさは変わらない。
さて、ドビュッシーの室内楽はどうか。たいていが退屈。世評の高いフルートとヴィオラとハープの曲なんて、途中で席を立ちたくなるし、チェロ・ソナタもどうも。
弦楽四重奏についても同じ思いを抱いていたのだが、寝床で20回ほど聴いたら、面白くなった。今更だけど、じつに奥行きのある作品だ。
2楽章はラヴェルのそれと同様にピチカートが多用されていて面白い。ラヴェルはこの曲に影響を受けたというから、こちらが先。
とりわけ、3楽章アンダンティーノはいい。都会の夜の帳が降りたとき、精霊が幽玄に立ち昇るかのよう。
ヌオーヴォ四重奏団、他の曲を聴いたことはありませんが、とても優れた演奏を展開しています。
三重奏曲やチェロ・ソナタも聴きなおしてみようかな。
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