色川武大の「喰いたい放題」を読む。
著者のあとがきにあるように、これは「豚のようにガツガツ喰う男の話」。
でも著者は子供時代を戦中に過ごしてきた世代だから、食べ物に対する感謝の気持ちを忘れない。
「野菜だって若い頃というものは、本当に生命力の満ちあふれた充実感があって、むげに包丁など当てにくい。ため息をつきながら眺めやったあげく、気をとりなおしてプツッと包丁を当てると、大仰ではなく、掌の中の生命を潰してしまったような後味が残る」。
春キャベツを食べたくなった。
スクリデの演奏でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴く。
スクリデは1981年にラトビアで生まれたヴァイオリニスト。子供の頃に、オイストラフが弾くチャイコフスキーをテレビで観て以来、この作曲家に対する思い入れが強いという。
実際、このディスクにはコンチェルトと「なつかしい土地の想い出」、「白鳥の湖」とチャイコフスキーづくしである。
私もこの曲が好きで、聴く頻度はブラームスやベートーヴェンやメンデルスゾーンよりも多い。もう、どんなヴァイオリニストのものでも聴きたいくらい。
スクリデのヴァイオリンは直球一本やり。小細工せず、真正面からこの名曲に立ち向かう。
音はやや太めで恰幅がいい。だから中低音の響きが厚く、どっしりしている。1楽章のスケルツォなどは、ひとつひとつの音にたっぷりの愛情を注いでいるように聴こえ、充実感がある。
ネルソンスのサポートは万全。ヴァイオリンを引き立てつつ、雄弁でもある。
バイバ・スクリデ(ヴァイオリン)
アンドリス・ネルソンス指揮
バーミンガム市交響楽団
2007年9月、バーミンガム、シンフォニー・ホールでの録音。
また大きなゴミ箱。
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