チャイコフスキー「交響曲第4番」 ムーティ指揮フィルハーモニア管弦楽団ムーティのチャイコのシンフォニーは、昔に1番と6番を聴いたきりだったように記憶する。1番は、とてもスマートでいい演奏、全体的には淡白だったように記憶する。ロストロの演奏を聴いた後だったのかもしれない。
「悲愴」についての内容はほとんど覚えていない。もしかしたら、聴いたことがないのじゃないかというくらい印象にないのだが、聴いた行為だけはうっすらと覚えている。もしくは夢だったのか。
まあ、この機会に、今度こそはキチンと聴いてみよう。
ムーティとフィルハーモニア管とのチャイコフスキー・ボックス、まずは4番から。
1番のときは淡白な印象だったが、改めて聴いてみると、オーケストラをよく鳴らせて迫力たっぷりな演奏。それでいて、ほどよく引き締まっており、やはりスタイルは洗練されている。いわゆるロシア臭というものは希薄な感じ。かといってどこの国のものと限定はしにくいものがあって、イタリアといえばイタリアかもしれないし、イギリスと言えばイギリス・・・、このへんはなんとも言えない。
ガツンとした歯ごたえのある両端楽章に加えて気に入ったのは、まんなかのふたつ。
2楽章は、オーボエの直線的な響きを軸にして、ひんやりとした感触を醸し出している。理性で抑制された悲しみを感じる。
3楽章においては、なんといってもプルンとしたピチカートのおいしさ。キチンと揃った合奏はあたりまえ、といった感覚で、とても流れがいい。聴きなれた音楽が、いつもとは違う表情になっていて、新鮮だ。なにが違うのか。特に変わったことをしているふうには思えない。音楽は不思議である。
ともに、やや速めのテンポが気持ち良い。フィルハーモニア管の技量の高さがきいていることは、言うまでもないでしょう。
1979年1月、ロンドン、アビー・ロード・スタジオでの録音。
PR