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ジュリーニのストラヴィンスキー「組曲"火の鳥"」

2009.07.20 - ストラヴィンスキー

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ストラヴィンスキー「火の鳥」 ジュリーニ指揮フィルハーモニア管


南部ヤスヒロの「じみへん倫理教室」を読む。
著者は高校教師。中崎タツヤの人気漫画「じみへん」を題材にしたエッセイである。
この本をあえて取り上げておいてなんであるが、やはり漫画のほうの存在感が大きいみたいだ。
読み終わった後、申し訳ないけれどエッセイのほうは全然覚えていない。なのに漫画のいくつかは忘れ難い印象がある。
そのひとつがこれ。
高校生らしき生徒が、教師に悩みを相談する。
「どんな人生だろうと結局はみんな死んじゃうんだ。だとしたら人生って意味ないよ。無意味だよ」
「今ごろ気づいたのか」
そのあと、その生徒は会う人みんなに「今ごろ気づいたんだって?」と揶揄される。
バスの運転手、トレーニング中のボクサー、井戸端会議をする主婦、ヤクザ、ガイジン、宇宙人…。
人生が無意味だということを宇宙人も含めて宣言しちゃっているところ、なんだか笑えて泣ける。


ジュリーニは「火の鳥」を3回録音しているが、このフィルハーモニアとの演奏は最初のもの。
ステレオ初期のLPであるが、音は悪くない。
「イントロダクション」から一気に引き込まれる。キメの細かい丁寧な弦の音と弾むような木管、そしてきらめくハープの音。ひとつひとつの音を慎重に大事に弾いている感じだ。
「王女たちのロンド」においてもそう。ひとつのフレーズのタメがじゅうぶんにあるので、ゆったりとした広がりがある。なんとも穏やかであり休日の午後にふさわしい。なんてくつろいでいると、次の曲で目を覚まされる。
「カスチェイ王の凶悪な踊り」は冒頭から激しい。大太鼓の打撃がすごい。皮が破れるのじゃないかと心配になるくらいの勢い。まさに「凶悪」な響きである。テンポは依然として落ち着いているせいもあって、音の大きさの効果がかえって目覚しい。
場面は変わって「子守歌」。これがまたしっとりとしていて品がいい。ファゴットの重厚な響き、密度が濃くて存在感がある。弦のトレモロに乗って「終曲」にさしかかっていくあたり、じわじわと高揚感が寄せてくる。それはテンポを速めた金管のファンファーレで最高潮に達して、華やかに幕を閉じる。
録音当時、ジュリーニはまだ40代にさしかかったばかり。充実の演奏である。
1919年版。

1956年ロンドン、キングズウェイ・ホールでの録音。

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