アンデルジェフスキのシューマン「ウイーンの謝肉祭の道化」を聴く。
このアルバムは、彼がカーネギーホールで行ったリサイタルの全ての演目を収録している。
・バッハ:パルティータ第2番ハ短調
・シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化
・ヤナーチェク:霧の中で
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番変イ長調
・バルトーク:3つのハンガリー民謡
なかでもヤナーチェクとベートーヴェン、それにシューマンが素晴らしいと感じたが、今回は特に感銘を受けたシューマンについて書いてみる。
この曲はシューマンの他の少なくないピアノ組曲のなかでも例外なく、幻想的である種のインスピレーションを感じる音楽である。
保有盤はミケランジェリ、リヒテル、デムスとあるが、これら巨匠に負けずとも劣らない、というか録音の良さを鑑みれば、むしろ優っている演奏だと思う。
このリサイタルの後のインタビューで彼はこう語る。
「『謝肉祭騒ぎ』はパーフェクトな作品です。とても若かった頃には、ずいぶんたくさん演奏しましたよ」。
「謝肉祭騒ぎ」とはどの部分を指しているのか。少し考えてみたが、曲全体のことを指しているのではないか知ら?
この組曲は5つの曲からなっているが、速くて激しい場面がわりと多い。なので、どこか特定の曲のことを言っているようではないように感じる。
解釈としてはテンポをあまりいじらない正攻法だが、ところどころ強弱の変化の味付けを施している。それはいかにも自然であり、音楽の流れを一層滑らかにしているし、深みを持たせている。
そしてなによりもいいのは、シューマンの漠然とした憧憬のようなものが、そこかしこから発散されていること。それは過剰な喜びであったり(第1,3,5曲)、逆にわけのわからない憂鬱さであったり(第2,4曲)。
彼の弾くシューマンを、まだこれしか聴いていないが、このピアニストのセンスはシューマンの性質に合うように思われる。「交響練習曲」や「森の情景」なども聴いてみたいものだ。
2008年12月3日、ニューヨーク、カーネギー・ホールでのライヴ録音。
普段は週末でも閑散としている江戸川公園も、今日は大賑わい。
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