シューマン 「クライスレリアーナ」、「森の情景」 ヴァレリー・アファナシェフ「組曲」マンスリーはこれで最終回。組曲というジャンルの音楽はいろいろあるけれど、思ったほどCDを所有していなかった。ジンセイで一番最初に買ったクラシックのLPは、チャイコフスキーの三大バレエ組曲だったのをよく覚えているせいか、多く持っているような錯覚をしていたのかもしれない。
シューマンの「森の情景」は、9つの題名をもつ小曲からできているピアノ音楽で、「組曲」という名称はついていないものの、ひとつひとつが独立した曲の集まりだということで組曲にいれてしまってもバチはあたらないだろう。たぶん。
この曲を始めて聴いたのは、ルービンシュタインの演奏だった。彼はシューマンをわりに得意としていたようで、いくつかの録音が残されている。ルービンシュタインの演奏で印象的だったのは第7曲の「予言の鳥」。不思議な感覚の和音とメロディーが、あたかも西洋の幽霊屋敷を思わせた。ピアノの音はとても濃くて幻想的で、この曲を初めて聴いたくせに、この演奏はとてもいいものだと確信させるものだった。
あと、1曲目の「森の入口」も大好きな曲だ。いかにも、これからメルヘンの世界が始まりまっせ、という感じ。楽しみ半分不安半分といったフラフラした風情が心地よい。
アファナシエフのピアノは、じっくりとしたテンポで幻想的な方向を狙っている感じはするものの、音そのものは明快であり、全体にスッキリした味わいになっている。明快な録音も後押し。
曲は甘口で、演奏は端麗辛口。
一杯やりながらこの曲を聴くと、あっという間に終わってしまう。ボトルじゃなくて曲が。幻想世界に酔いしれ、時間が経つのが恐ろしく速く感じるのである。無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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