シノーポリ/フィルハーモニア管シノーポリがクラシック音楽界をずいずいとのし上がって
きたころの録音。
自分が精神医学を専攻したこともあり、精神分析を曲の解釈に
持ち込んだことで話題となった。
曲を精神分析するのか?
作曲家を精神分析するのか?
具体的になんなのか、全然理解できなかったが、なんだか
変わったことをやるヒトだ、というのが彼に対する印象だった。
「未完成」の聴き比べをしていて、実に久しぶりに取り出して
みた。
このCDの特徴は、シノーポリの細部に対する配慮だ。
音の強弱、テンポ、バランスを1小節ごとに変化させているかの
ように、とても細かいところにまで丁寧な細工を施している。
この手作りを感じさせる仕上がりは、精神分析というよりも、
宮大工の職人芸という感じがする。
フィルハーモニア管は名人揃いだが、指揮者の意図をここまで
汲み上げるには、相当なリハーサルを重ねたに違いない。
「未完成」は明るく歌わせた演奏で、シューベルトの悪魔的
世界は希薄だ。丁寧な細工がときに鼻につくが、全体的には
悪くない。
「イタリア」は文句なし。
細工の効果なのか、各楽章ごとの性格づけが明確になって
いるので、統一感がある。
でも、なんといってもこの演奏では両端楽章のイキのよさが
いい。
艶のある響きが音を立てて泡立っており、これは、お耳の
快感である。参りました!
このCDは、シノーポリの最高傑作のひとつだと思う。
★古典音楽blogランキング!★クラシック音楽ブログ集★にほんブログ村 クラシックブログPR