エルガー「エニグマ」 ボールト指揮ロンドン交響楽団宮脇檀の「男の生活の愉しみ」を読む。
これは、食・住・旅に関するエッセイ。
著者は建築士であるから、「住」のところの、とくに寸法に関するくだりは含蓄に溢れていて勉強になる。
でも、食いしん坊であるワタシには、「食」についての以下の文章に心を惹かれた。
「世界で一番簡単な料理または酒としてオイルサーディンの缶詰を開けて火にかけるだけというのがある」。
なるほど、オイルサーディンは火にかけて食うものなのか。
料理と言えるかギリギリの線だが、早速試したことは言うまでもない。
ボールトの「エニグマ」を聴く。
いままで、この曲を生を含めていくつかの演奏で聴いてきたが、いまひとつよくわからないというか、しっくりとこなかった。どうもハッキリとしない、モヤモヤする思い。どの部分もなんだか唐突で、わざとらしいという印象があったのだ。
ボールトがロンドン響を指揮をしたこの演奏では、それらがスッキリと腑に落ちるように感じた。どうもこの曲は、わざとらしいというのが本来の性質であるようだ。もっと悪く言えば、あざとい。
そのあざとさに、ボールトは真正面から向き合っている。襟を正して、大真面目に。いい意味でのケレン味をじゅうぶんに発揮させていて、ゆっくりとした場面ではそれなりに悲哀に満ちた表情で、盛り上がる個所では大風呂敷を広げるように、大胆に攻めている。
それが、ツボにはまってしまった。
「エニグマ」という曲を、こんなに楽しく聴いたのは初めてである。いい演奏だ。
ロンドン響の重厚でコクのある音はさすが。
1970年4月、ロンドン、キングズウェイ・ホールでの録音。
キング・オスカーに思いを馳せて。
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