バッハ アダージョ
フランク 前奏曲、フーガと変奏曲
モーツァルト ピアノとヴァイオリンのためのソナタK301
ドヴォルザーク ソナチナ
モーツァルト ピアノとヴァイオリンのためのソナタK304
ブラームス ヴァイオリンソナタ3番
(アンコールはクライスラーと、スプリング・ソナタ2楽章)
カフェでクラシック音楽を聴くのは初めて。席は25ばかりだったか。胴が長いくせに図々しく1番前に座ったら、案の定、ソリストが目の前。手の届くところにストラディバリウスが。タダでさえ冴えない我が人生で、こんな贅沢はない。
レスコヴィッツというヴァイオリ二ストを初めて聴いた。ザルツブルクを本拠地に活躍している老齢のソリストである。
音程の確かさといい、ボウイングの滑らかさといい、細やかで正確な指遣いといい、一流のもの。残響がほとんどないロケーションなのに、どの音もことごとく柔らかい。そして人口臭がない。この音色は大理石ではない。河原に佇む自然石のよう。暖かみがあり丸くてがっしりとし揺るぎがない。
まず最初にバッハに圧倒され、ドヴォルザークも素敵だったが、モーツァルトのK304を特に気に入った。疾走する哀しみを、広く太く受け入れているような、スケールの大きなヴァイオリンだった。深く感銘を受けた。
長谷川のピアノは万全で、どの曲も完成され尽くしていた。唯一のソロであるフランクは前奏曲の、高いのと低い和音をゆったりと響かせている箇所が印象に残った。そして、彼女は後半になるにつれてグングンと冴えてきた。隙なし。大変なスタミナの持ち主なのかもしれない。
とても親密で豊穣なリサイタルだった。
2015年11月19日、東京、大井町グラン・キネマにて。
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