ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンの演奏会へ行く(2016年11月22日、東京、サントリー・ホールにて)。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲2番
ピアノ:キット・アームストロング
R・シュトラウス 「アルプス交響曲」
指揮者もオーケストラも生では初めて聴いた。ドレスデンはともかく、ティーレマンに関してはディスクで聴いた限り、ブルックナーにしろブラームスにしろ、交響曲でこれといった印象がなかった。でも、R・シュトラウスという、ワーグナーの影響を色濃く受けた作曲家の音楽が演目なので、期待した。
1曲目のベートーヴェン、ソリストはアームストロング。彼は24歳の若手で、ブレンデルの弟子だったという。
とても瑞々しいピアノ。粒立ちがよく、高音の伸びがいい。ベートーヴェンが最初に作ったピアノ協奏曲は、彼の手によって、夢と憧れに満ち満ちた作品として再生された。
ティーレマンの指揮は、音量のバランスがGood。ただ、タイミングがずれている個所がいくつかあり、これはピアノが代役(当初の予定は、ブロンフマン)だったせいで、キットとの合わせ練習が少なかったからだろうと推測する。
後半のアルプス交響曲。このオーケストラが初演したこともあり、ドレスデンにとっては自家薬籠中の物。凡演は想像できない。
冒頭からすぐ、「夜」のシーンで弱音で鳴らされるトロンボーンを聴き、鳥肌が立った。柔らかいし、呼吸が深い。
「頂上にて」においての、トランペット。これも、突っ張ったところは皆無であり、鋭いながらも羽毛のような手触り。オーボエのコクのある音色。「雷雨と嵐、下山」でのティンパニとグラン・カッサはまるで皮が匂い立つよう。「週末」から「夜」にかけて、じっくりとテンポを落とし、じっくりと骨太な演奏を繰り広げるあたりにも、ティーレマンの手練を感じないわけにいかなかった。
ただ、手放しでいいところばかりではなくて、縦の線がそろわないところが散見された。これは、流れ重視のティーレマンのスタイルなのであろう。細かい指示がないので、奏者が出るタイミングがずれる。大きなキズではないものの、少し気にはなった。
それにしても、ドレスデンはいいオーケストラ。特に、金管楽器と打楽器がいいと感じた。とてもまろやかで手厚い。シカゴ交響楽団とは全然タイプは異なるものの、これはやはり、世界の一級品であると感じた。
パースのビッグムーン。
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