都民芸術フェスティバルのオーケストラ公演。東京都が補助しているので、チケットが廉価だし、その気になれば在京のオーケストラを全て聴くことができるところがいい。その中から、今季は読響と都響に馳せ参じる。
まず読売日響。指揮者はブルガリア出身のダネイル・ラチェフ。フィラデルフィア管弦楽団のアシスタント・コンダクターを2年間務めたあと、現在はアメリカのユージン交響楽団の音楽監督に就任しているとのこと。フィラデルフィアからユージン…。オーマンディつながりっぽいが、関係はなさそうだ。
セミヨン・ビシュコフあるいは伊良部秀輝を思わせる風貌から繰り出す音楽は、手堅いものだった。
シューベルト:付随音楽「ロザムンデ」序曲
ショパン:ピアノ協奏曲第1番
ブラームス:交響曲第2番
冒頭に「ロザムンデ」を置くあたりはいかにもエンジンの暖め音楽といった感があるが、それが悪くない。じょじょに音を積み重ねていって、やがて第一主題に入ると高揚する。ヴァイオリンがふっと転調するところなんてゾクっとする。
ショパンのソリストは三舩優子。このピアニストを聴くのは2度め。安定した技巧を土台に、自然でのびやかにテンポを動かして泣かせどころを作るのがうまい人との印象を持っていたが、ショパンでもそうだった。ここぞというときに弾き崩す按配がちょうどよい。オーケストラとのバランスもよかった。
池袋のネオン街に思いを馳せた休憩を経て後半。
ブラームスは、やや速めのテンポで一気呵成に進んでいった。コントラバスがゴリゴリ鳴って勇ましい。重すぎず軽すぎず、直線的なフォームが清々しい。4楽章においてトロンボーンとチューバの柔らかな響きが印象に残る。高圧的なものではなくむしろ周囲を引き立たせるような調和のある音。ヴァイオリンが重層的に鳴り響くなかを、かきわけかきわけ、チューバがほんわかと、かつ明瞭に自己主張しているところは、なかなかCDでは聴きとることができない場面だった。
やがてぐんぐんと熱を込めていき、ラストは爽快に締めくくられる。重量を軽めに保ちつつ、いかにも「田園」っぽい雰囲気を醸し出していた。この曲はこういうやり方が、しっくりくるなあ。
2011年2月7日、東京芸術劇場。
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