今週はNHK-FMでウイーン・フィル定期を聴いた。といっても、月曜日のムーティと木曜のティーレマン、それぞれ後半部分のみ。
他の日は呑んでいたので、金曜日のマゼールは聴きのがした。
ムーティのプログラムは全てイタリアの作曲家で占めたもの。とくにニーノ・ロータはよかった。
トロンボーン協奏曲、それに交響組曲「山猫」。
ヴィスコンティ監督の「山猫」は、封切りではないけれど何度か映画館で観た。シチリアの貴族の没落を描いた3時間に及ぶ大作。きらびやかで豪奢な映像、個性ある俳優。ことにバート・ランカスターの風格、アラン・ドロンの若々しさ、クラウディア・カルディナーレの妖艶さ、この3人による演技は華があってよい。
そしてロータの音楽。壮大なオーケストレーションに乗って、プッチーニを思わせる甘い旋律がこれでもかと出てくる。「ゴッド・ファーザー」も彼の手によるものということで、シチリアを描いたら右に出るものはいないだろう。といっても他に知らないだけなんだけど。
ムーティの指揮は思い入れたっぷりで、大きなスプーンでたっぷりと感傷を注ぎ込んだもの。
オーケストラの響きも甘くてコクのあるウインナ・コーヒーばりの濃厚さは、ジュゼッペ・ロトゥンノの重厚な映像を思い出さずにはいられないものだ。
ムーティは昨年の来日公演でも同様のプログラムを演奏していたけれど、これは聴きたかったな。
木曜はティーレマン。
トリで演奏されたのはベートーヴェンの2番。
比較的ゆっくりとしたテンポで厚い筆致で描いたベートーヴェン。
2楽章までユニークなくらい恰幅のよい演奏だが、3,4楽章のリズムが安定していないのが気になった。
ティンパニの強烈な打撃が柔らかくておいしいものの、全体のリズムがふらついているので、落ち着きがない。途中から聴くのがツラくなってきた。
最後はそれなりに盛り上がりをみせ、盛んな喝采を浴びていた。
全体に、ちょっとヘビーなベートーヴェンであった。
2008年9月29日(ムーティ)、11月30日(ティーレマン)ウイーン楽友協会の収録。
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