ギレリスのピアノで、リストのロ短調ソナタを久しぶりに聴きました(1964-65年、ニューヨーク、タウンホールでの録音)。
全曲を支配する主題は、ベートーヴェンの「運命」の動機よりも、むしろ激しいノック。リストはこの主題をもって、ロマン派という枠組みを突き破り、近現代への扉を開いたのではないだろうか。なんて、これは邪推。
でも、ギレリスの演奏に触れると、そんな妄想が知らず知らずのうちに湧き上がる。とても激しい打鍵です。
3楽章の2分過ぎ以降は嵐。めくるめくように吹きすさぶ音は、いくぶん乾いた録音と相まって、手に汗を握る興奮をもたらすのです。
でももちろん、彼のピアノは苛烈なだけじゃあない。2楽章の穏やかなところは、夢見るような柔らかさに溢れてもいます。こうした懐の深さがギレリスの真骨頂。
いい演奏だと思います。
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