ブーレーズ指揮シュターツカペレ・ベルリン他の演奏で、マーラーの交響曲8番「千人の交響曲」を聴く(2007年4月 ベルリン、イエス・キリスト教会での録音)。
これは、細部まで見通しのよい演奏。全体を通して、テンポは比較的ゆっくり目。見通しのよさというのは、管楽器というよりも、弦楽器が光っているように感じる。いままで聴いたディスクからは聴こえなかった音が明瞭に聴こえる箇所があって、ハッとさせられた。
第1部はそういうわけで、立体的に整備された管弦楽の妙を味わうことができる。終結部は寄せては返す波、これもとても明瞭に鳴っていて効果的。
第2部のアダージョ部分は、若いころのブーレーズを思い起こさせる精緻さがある。ただ、オーケストラがシュターツカペレ・ベルリンで、響きが柔らかいため、冷たい感じはしない。
歌手は、みんな素晴らしい歌を聴かせる。
ブラッハマンの法悦の神父は、風格にはいささか欠けるように思うが、若さで聴かせる。これはこれで魅力はある。
ホルの瞑想する教父は威厳たっぷり。諭されている気がする(笑)。
ボータによるマリア崇拝の博士は、勢いがよく熱気がある。声そのものはつややか。その背後で、おもむろに導入される男声合唱は感動的。
ロビンソンの罪深き女は高音の伸びがよく、ヴァイオリン、フルートとうまく絡んでいる。
デヤングのサマリアの女は落ち着いた佇まい。シュレーダーのエジプトのマリアは、声が深い。ウォールの贖罪の女は、可憐な感じ。ここで第1部の第2主題が弦楽器によって奏されるが、コクがあってとても美しい。ケイロスによる栄光の聖母は、透明感を湛えたもの。
合唱は、男声・女声・児童いずれもよく練られていて、肌理が細かい。
神秘の合唱からバンダ出現のくだりは重厚な迫力があり、それを保ったまま荘厳に終結する。
トワイラ・ロビンソン(ソプラノⅠ:罪深き女)
エリン・ウォール(ソプラノⅡ:贖罪の女)
アドリアネ・ケイロス(ソプラノⅢ:栄光の聖母)
ミシェル・デヤング(アルトⅠ:サマリアの女)
シモーネ・シュレーダー(アルトⅡ:エジプトのマリア)
ヨハン・ボータ(テノール:マリア崇拝の博士)
ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(バリトン:法悦の神父)
ロベルト・ホル(バス:瞑想の神父)
カルヴ・アウレリウス少年合唱団
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン放送合唱団
パースのビッグムーン。
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