デイヴィッド・ゴードン(青木千鶴訳)の「二流小説家」を読む。
ニューヨーク在住のしがない小説家、ハリーのもとに一通の手紙が届く。かつてポルノ雑誌でコラムを執筆していたときのペンネーム宛てに送られてきた手紙の差出人は、四人の女を惨殺した連続殺人鬼。死刑執行を数ヶ月後に控えた今、告白本の執筆をハリーに依頼したいという。ここから物語は始まる。
題名からしてコミカルな味のミステリーと思いきや、なんともグロい内容。被害者の遺体は、いままで読んだどのミステリーと比べてもトップクラスの残虐さ。なので、食事中には読まない方がいい(←フツー、読まないか)。
途中に主人公がいろいろなペンネームで書いた小説が挿入されている。月並みだけれどもなかなか読ませる。それが全体のストーリーのひとつのスパイスにもなっている。
さして新味はないけれども、面白かった。
東京クァルテットの演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲15番を聴く。
ブログ仲間がジュリアードの演奏でこの曲を書いていたのに感応し、今日はこの曲の異演をいくつか聴いた。
スメタナ四重奏団、アルバン・ベルク四重奏団、そしてこれ。このなかでは、音程の確かさとアンサンブルの緊密さが優れているこの演奏を気に入った。
この曲、ベートーヴェンは当初4楽章構成を考えていたらしいが、病気のために作曲が中断される。腸カタルである。やがて快復し、再着手した際にひとつの楽章を挿入するよう計画を変更した結果、5楽章の形式になっている。
白眉は、追加された第3楽章のアンダンテ。これには、「病癒えたる者の神に対する聖なる感謝の歌」との頭註が伏されている。
穏やかである。せつない旋律のなかから、ヴァイオリンによる希望の光がキラリと光るところがいい。
東京SQの仕上げはとても丁寧。ひとつひとつの音を慈しむように弾いている。合奏はキッチリしていることに加え、各パートがほろほろとほぐれていて見通しがいい。これがこの演奏のもっとも大きな特色だろう。
1990年、プリンストン大学、リチャードソン・ホールでの録音。
オペラ座。
在庫がなく、ご迷惑をおかけします。
6月上旬に重版できる予定です。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR