ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第30~32番 グールド(Pf)今日は10月の第1日曜なので、スカパーの「クラシカ・ジャパン」が無料で視聴できる日なのだ。
夕方にバーンスタインの「大地の歌」を観る。イスラエル・フィル、ルートヴィヒ、コロというメンバーは録音と同じものだが、こちらは観客の入ったライヴ。冒頭のオケの鳴りは、CDと同じであまりパッとしないが、だんだんと良くなっていく。終楽章のハープ、チェロのピチカートはよく鳴っていて逆にハッとさせられる。
歌ものは映像付きがいい。バーンスタインの指揮姿も魅力だが、両歌手の表情がわかるのは情報量として大きいし、歌だと思わず感情移入してしまうのだ。
グールドの後期のベートーヴェンは、彼が23歳のときに録音されて以来、とうとう再録をすることはなかったけれど、モノラルとはいえ演奏は最高だ。
32番というと、ものものしく気合の入った演奏が多い。もちろんそうしたピアノも悪くないし、作曲年代や最後のソナタという背景を考えると、それが王道なのかも知れない。
その一方で、まるで鼻歌を歌うかのように弾くやりかたもある。グルダやグールドがそう。
音は軽めでテンポは速い。いかにも思い入れがなさそうなピアノなのだが、聴いていくと軽い味の中にしみじみとベートーヴェンが見えてくるような気がする。
この曲は、冒頭の荘重な響きがいかにも堅苦しいベートーヴェンの面目躍如といった音楽となっているが、むしろ難しいのは第2楽章のきかせかたじゃないだろうか。ジャズを思わせるパッセージがあるかと思えば、「田園」の終楽章のように思わず家に帰りたくなるような場面もある。まったく多彩な楽章だが、ここをグールドは割りに軽く流していく。この流し方がなんとも絶妙で、この音楽の難しさを感じないのである。軽いけれども、味がいい。
たぶん、各場面のテンポや音量は周到に計算され尽くしているのだ。
これが23歳のときの演奏なのだろうか、なんていう驚きは、グールドの場合ない。PR
無題 - sweetbrier
Re:sweetbrierさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司
コメントありがとうございます。
このジャケット、カッコイイですね。私の聴いているものと違うのですが。最近発売された紙ジャケットのようです。ジャケ買いしてもおかしくないですね。
32番の中で、私的にはグールドの演奏はベスト3に入ります。あとのふたつははっきりしませんが(笑)。
グルダの32はアマデオとロンドンではないかと思います。ロンドンのは29は聴きましたが32はまだです。アマデオよりも若い頃のものではないでしょうか。
ちなみにアマデオの演奏はとても良いです。快速テンポの中に、普段着のベートーヴェンがいるかのようです。
2007.10.07 21:32
無題 - rudolf2006
Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司
コメントありがとうございます。
カミさんが韓流を観るためにスカパー契約しているのですが、ほぼ毎日韓流で閉口しています…。
「クラシカ・ジャパン」は面白い番組が多いですが、契約してしまうととても全部観きれないので、月1で楽しんでいます。バーンスタインの指揮姿は華があるのでみていて飽きませんねえ。
ミケランジェリのCDはたしか持っていたので、じっくり聴いてみます。グールドのは、それほど変わったことをしたものではなく、剛球ストレートな演奏です。あっさり味で気に入っています。
>聴きたい演奏は多いですが、人生は短いような感じがしています~。
同感です。仕事している場合ではないですね(笑)。
2007.10.08 10:48
無題 - bitoku
Re:bitokuさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司
コメントありがとうございます。
このグールドのベートーヴェンは、けっこう前から愛聴している演奏です。bitokuさんと同様、一時期は寝るときに毎晩聴いていました。今思えば、何を思ってこんな重い選曲をしていたのか…。
このジャケットはカッコいいですよね。
買いなおそうかとも思わせる良さがあります。
それにしても、32番にあるまじきこの軽い演奏。32番の概念を覆されます。とはいえ、これも55年の録音だから、まあ古いものなのですが、世間一般には主流はバックハウス系といえましょうか。バックハウスもいいのですけどね。
30、31と並べて聴くと、グールドのベートーヴェンに対する考え、愛情が少しわかるような気がします。
軽いとはいえど「これがベートーヴェン」、そんな手ごたえを感じる演奏であります。
2007.10.08 22:02
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