マゼールの指揮で、プロコフィエフの交響曲5番を聴く。
クリーヴランド管弦楽団は、この曲をセルとも録音している。60年代なのにとても鮮明な録音であり、硬いアンサンブルと個々の奏者の名技を併せ持った名演である。セルは、実はフランス物とロシア物が素晴らしい。このプロコフィエフは、彼の録音人生のなかでのひとつの頂点だったのではないかとすら思えるのだ。
マゼールがこの録音に踏み切ったのは、当然ながらまずはレコード会社の要請であるだろうが、セルへの挑戦といった意味もあったのじゃないだろうか。
引き締まったアンサンブルはセルと同様。ただ、スケールの大きさではセルに軍杯があがるだろう。それでいい。クリーヴランド・デッカ時代のマゼールは盆栽のような小宇宙世界の建築に血道をあげていたのだから。
それにしてもこの曲、どうしたものか。音遊びという点ではマーラーやバルトークに劣るし、深みに欠ける。なにを目的に作ったのかがよくわからない。好きで作ったのだろうか。
おもちゃ箱をひっくり返した、などという形容詞があるが、それはこの曲にピッタリあてはまる。ことに、終楽章はなにもかもがとっちらかって、収集のつかないまま突然に終わりを告げる。
ただ正直言って、この曲を好きではないので、演奏のレヴェルの高さはしみじみわかる、といったそんな感想しか書けない。
曲は嫌いだけど演奏はいい。そんなことを感じさせる典型か。
1977年10月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音。
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