小林秀雄全集月報集成「この人を見よ」を読む。
書き手の顔触れはスゴイ。
川端康成、井伏鱒二、今日出海、坂口安吾、亀井勝一郎、吉田健一、諸井三郎、草野心平、大岡昇平、越路吹雪、武者小路実篤、安岡章太郎、吉田秀和、角川源義、山本健吉、永井龍男、林房雄、水上勉・・・。
知っている人も知らない人も、まだまだたくさんいる。20世紀の文壇は小林抜きでは語れないのじゃないかというくらい。
この本には下世話な話が少なくない。ことに、小林の酒のうえでの武勇伝。
一升瓶を抱えたまま水道橋のホームから転落したのに、倒れたまま一升瓶を握っていたというエピソードは、何人もの人が証言している。
飲むと見境なく絡むという話も枚挙にいとまがない。一度かみつくと、相手が泣きだすまでやめないという執拗さ。期待している人にのみそうした振る舞いをする、などと言う人がいるがどうだか。明治男の悪い癖であろう。
本を読むだけでじゅうぶん。
マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏で、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」全曲を聴く。
バレエ音楽には長いものが多いから、抜粋したものだけを聴くことがある。チャイコフスキーがそうだし、このプロコフィエフも。スクロヴァチェフスキのものをときたま聴いていた。
恥ずかしながら、この曲の全曲を聴くのは初めて。やはりこの音楽も、できるならば全曲通して聴くべきだろうと思った。
ハイライト版は1幕からの抜粋が多いみたい。そして動きの多い音楽が配置されている。文句なく面白い。「古典交響曲」をそっくりそのまま引用している場面もある。
2幕は前半が激しいが後半になると、鎮静化する。「ジュリエットの寝室」あたりから。シュールな佇まいは、改めて20世紀の作品であることを感じないわけにいかない。
ラストは静かに締めくくられる。原作を考慮すればそうなるだろうか。バレエ音楽としては珍しいのじゃないだろうか。
プロコフィエフは交響曲も協奏曲も多く残しているが、バレエ音楽にもっとも才能を発揮しているように思う。
マゼールの指揮は気合いじゅうぶん。メリハリをきっちりとつけた筋肉質のスタイルは、全曲を通して揺るがない。静かに燃えている。
1973年6月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音。
おでんとツイッターやってます!八甲田その15。
本を出しました。
お目汚しですが、よかったらお読みになってください。
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