ショルティ指揮シカゴ交響楽団の演奏で、ブルックナーの交響曲7番(ノヴァーク版のようです)を聴きました(1986年10月、シカゴ、メディナ・テンプルでの録音)。
こんなに完璧な7番の演奏は他にあるのかな?
冒頭のキザミは精緻。次に弦楽器で奏される主題はおおらかであり、冬山の清水のように澄んでいます。こういう音色はヨーロッパのオーケストラではなかなか出せないと思うし、ほとんど聴いたことがありません。ウイーン・フィルとの演奏でみせた切り込みの鋭さは、こちらではマイルドになっています。
2楽章も同様。中庸なテンポで淀みなく滔々と流れていきます。弦も金管も力んだところはなく、自然。山頂はティンパニ、シンバル、トライアングルで、金管の咆哮が相まってパワフル。ワーグナー・チューバは音量のコントロールが絶妙で、非常に明晰、呼吸もたっぷりと深い。
3楽章ではめくるめく音響美を味わうことができます。凛々しい弦楽器を基調として、フットワークが軽くトーンの明るい金管、トロリとしたフルート、浮き立つようなオーボエ。各奏者がなにしろうまい。
終楽章も、シルクのネクタイのように肌理細やか。いっぽう、トロンボーンは押しが強く、そのコントラストがこの演奏の妙味のひとつだと思います。ラストの全奏は美しく溶け合っています。
全体を通して、とても気持ちのいい演奏を堪能しました。
録音は大変良好。
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