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"その女アレックス"、バーンスタイン、"管弦楽のための協奏曲"

2015.03.04 - バルトーク




ピエール・ルメートル(橘明美訳)の「その女アレックス」を読む。

これはamazonの内容紹介。
おまえが死ぬのを見たい――男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。
ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、慟哭と驚愕へと突進する。

アレックスは、いろんな場面で泣く。とにかく、よく泣く。泣きながら人を殺すニキータという映画のヒロインがいたが、あれを思い出す。

それに対し、刑事たちは徒党を組んでいる。ハゲでチビな中年警部を中心に、ブランド物で身を固める大金持ちの刑事、逆に貧乏丸出しでそこらじゅうで煙草をたかる刑事、そしていかにも同じ釜の飯を食った仲であり、阿吽の呼吸で通じあう上司の部長刑事。
難事件を前にしつつも、仲間がいれば怖くない。

アレックスは、徹底的に孤独だ。物理的にも、心情的にも。彼女でなくても泣きたくなる。気持ちはわかる。

そんなわけでこれは、孤独なアレックスに感情移入しないわけにいかない、ミステリー小説である。









バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの演奏で、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」を聴く。

先週に聴いた同じコンビによる「春の祭典」は素晴らしかったが、これもいい。さらに、昨日同じコンビによる「火の鳥」組曲を聴いて、これまたまたいい出来栄えだった。3つに共通するのは、録音時期が50年代だということ。演奏の目覚ましさもさることながら、録音も信じられないくらいに鮮明。「火の鳥」とカップリングされているのは、ロンドン交響楽団との「春の祭典」である。これは72年の録音とあるが、演奏も録音も、はるかに50年代のほうが優れている。これはなぜだろうか。そんなことにも、このエディションを聴く興味が出てきた。

このバルトークは、合奏力の力よりも、オーケストラの個人技の力量の高さを知らしめた演奏である。この曲の題名にふさわしい。

おいしい握り寿司は、口に入れた途端にご飯が一粒づつほぐれるというが、この演奏では大きな見せ場であってもひとつひとつの楽器が際立っている。ことに木管楽器のうまさが目立つ。フルート、ファゴット、オーボエ、クラリネット。音にコシがあるだけでなく、吹きぶりもなめらか。聴いていて気持ちがいい。

4楽章は、まさに管弦楽のための「協奏曲」というに値する音楽である。3分8秒から始まる、弱音器を用いた弦楽器の調べは、いままで聴いた中で最も美しい。これを聴くために、このディスクを取り出す価値はある。木管楽器の滋味ある音色が、なんとも素晴らしい。
さらに終楽章の頭で、恐るべき速さを駆け抜けるヴァイオリンの技量の恐るべき高さは、他に掛け値のないものだ。

「オケコン」にも多くのディスク、名盤が少なくない。聴いただけでも、セル/クリーヴランド管弦楽団、ライナー/シカゴ交響楽団、ショルティ/ロンドン交響楽団、ショルティ/シカゴ交響楽団、クーベリック/ボストン交響楽団、オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団、カラヤン/ベルリン・フィル(EMI)、ドラティ/コンセルトヘボウ管弦楽団、など。
そのなかで、この演奏は5本指に入れるしかないだろう。


1959年11月、ニューヨーク、ブルックリン、セント・ジョージ・ホテルでの録音。




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八甲田その18。







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