小澤征爾指揮ウイーン国立歌劇場o,cho
ゲルマン : ウラディーミル・アトラントフ
リーザ : ミレッラ・フレーニ
トムスキー : セルゲイ・レイフェルクス
伯爵夫人 : マルタ・メードル
ポリーナ : ヴェセローナ・カサロヴァ
1992.5.16 ウイーン国立歌劇場この連休は昔に録ったビデオの掘り起こしに躍起になっている。忘れ去っていたものが出てくるのは面白いものだ。それを観るとなると3連休では追いつかなくてもっと時間が欲しいところだがキリがないようだ。1巻観おえるとまるで一仕事終えたような充実感というか安堵感がある。
この「スペードの女王」は昨日から観はじめて今日の午前までかかった。家でオペラを通して観るのはまとまった時間がないとなかなか難しいようである。いや、時間がないわけではなくどちらかといえば休日は暇で暇で仕方がないのだが、それでも数時間じっとモニターの前に座り続けると思うと思い切りが必要になってくる。見始めれば面白くなって観てしまうのだけれど。
このオペラはプーシキンの原作に基づいているが、こないだ岩波文庫を立ち読みしたら原作は戯曲ではなく小説なのですね。
まず簡単にあらすじを。
ゲルマンは博打打ち。婚約者のいるリーザに一目ぼれし寝取る。同時に、リーザの祖母の伯爵夫人が昔賭場で大金を手にしたという話を耳にする。その方法を知りたいゲルマンは伯爵夫人をピストルで脅して聞き出そうとするが、伯爵夫人はショックで死んでしまう。
ある日、伯爵夫人の亡霊が現れて、カードの秘密を知る。3枚のカードは3、7、エースが出ると。
ゲルマンは賭場に現れ、きいたとおりに3、7を出して大勝する。
三度目の相手はリーザの元婚約者。エースが出ると思いきや、スペードのクイーンが出て負ける。
そのショックでゲルマンは死ぬ。
ゲルマンは伯爵夫人を実質的に殺してしまうわけだが、それを許すリーザが凄い。ゲルマンのどこがそんなに魅力的なのかよくわからないところがおおいに引っかかるが、まあいいか。
チャイコフスキーのオペラ、今回初めて聴いたのだが、バレエ音楽のように才気煥発華やかなものではない。台本が暗いというのもあるのだろうが、彼独特の魅力的な旋律が登場するシーンは少ない。この公演では2つの場面(リーザの部屋で仲間たちが民謡を踊るところと、賭場でオッサンたちがコサックを踊る)でバレエが登場していたが、そこでは今まで聴いてきたチャイコフスキーが少し顔を出していたが。
歌手ではゲルマンの友人トムスキーを演じたレイフェルクスが声、演技ともに立派である。軍服が似合いますな。リーザのフレーニも安定感のある声を聴かせてくれる。役柄があまりに馬鹿っぽいので損な役じゃないだろうか。伯爵夫人を演じたメードルはいるだけで凄すぎるので、声は二の次でいいだろう。殺されて亡霊になっちゃったが、生きていても亡霊のような存在感にみちみちている。
小澤の指揮は、前半はどうにも音が出ていなくてやきもきした。チャイコフスキーの音楽にも責任の一端はありそうだ。途中からようやくエンジンがかかってきた感じ。
それにしてもウイーンらしい甘美な音が最後まで聴こえなかったのは演奏のせいか録音のせいか、はたまた拙宅の装置のせいなのか。無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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チャイコフスキー好きなのですが、思えば全部をきいているとはいえずまだまだ聴いていない曲はたくさんあります。逆に「オネーギン」は全曲完走していません。これからの楽しみにします。
「スペードの女王」はたまたま今回映像つきで聴きましたが、これをCDで聴くとなるとつらかったかも知れません(笑)。
チャイコフスキーはバレエ音楽で最高に才能を発揮した作曲家なのかなと、しみじみ思います。
メードルは往年の大歌手ですが、ここでは演技も歌も博物館的味わいを発揮しています。