フランシスコ・アライサのテノール、アーウィン・ゲージのピアノで、シューベルト「美しき水車小屋の娘」を久しぶりに聴きました(1984年7月、オーストリア、ホーエンエムスでの録音)。
記憶が確かならば、アライサはこのCD(レコード)の発売とほぼ同時期に来日して同じ曲を歌っています。
その模様はテレビで放送され、録画もしました。「いらだち」において、主人公が感情を爆発させるところを真正面からアップで捉えた映像は、今でも印象に残っています。
アライサの歌は、比較的ゆっくり目のテンポを基調とし、煮えたぎる激情とパステルカラーの抒情味とがバランスよく同居したもの。そして、呼吸が深くたっぷりとしている。いま改めて聴くと、彼の声はヒロイックだし筋肉質でもあるので、狩人も演じられそう。笑
好きな「涙の雨」は、言葉のひとつひとつを噛みしめた、歌というより語りの世界。「マタイ受難曲」における福音史家を思い起こさせるような味わいを醸し出していて、これは一興だと思います。「休息」、「邪悪な色」などでの輝かしい美声は気持ちがいい!
ゲージの硬軟併せ持ったピアノも盤石で、全20曲とても聴きごたえがありました。
「水車小屋の娘」の多くの録音のなかで、この演奏はやっぱり外せないな。
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