グリーグ「ピアノ協奏曲」 アンダ(Pf) クーベリック指揮ベルリン・フィル開高健の「地球はグラスのふちを回る」を読む。
これは、世界をまたにかけて酒を呑む話。
ブルガリアはソフィアのスモモのブランデー、ルーマニアのぶどう酒、チェコのビルゼン・ビール、ポーランドのズブロヴカ、ロシアのウォツカ、スペインはマドリードのぶどう酒、中国の茅台酒・・・。
たまらん。
「いまの人たちがうまいと思う味がそのものの実の味なのである。それが、ものの味というものの、地上における、いつもの真理なのだと思う。文学作品と、ものの味とは、その点でちょっと基本的に相違するところであると思う。」
酩酊気分で下の話をおりまぜつつも、味に関するこうした鋭い指摘をするあたり、酒呑みであることもひとつのジンセイ勉強なのだナ(←言い訳半分)。
ゲザ・アンダのピアノ、クーベリック指揮ベルリン・フィルの演奏でグリーグのコンチェルトを聴く。
アンダというピアニスト、昔から名前だけはよく聞いていたが、実際に聴きだしたのはCD時代になってからである。
とりあえずモーツァルトの協奏曲をいくつか聴いてみたところ、とてもよかったので、機会があれば他の曲もかねがね聴いてみたいと思っていた。
そのひとつが、このグリーグ。
期待を裏切らない出来である。一言でいってしまうと中庸ということになると思う。テンポにしろ、フレーズのつけかたにしろ、音色にしろ、突飛なところはない。かといって、無策なわけではない。強弱のつけかたの抑揚やテンポのかすかな変化に、センスのよさを感じる。かゆいところを、優しく掻いてくれるくれるような。
これはなにげなくディテイルにこだわった演奏であって、何度聴いても飽きないタイプといえる。実際、先週から5回ほど聴いているが、毎回楽しく聴いている。
クーベリックの指揮は、ピアノにぴったり寄り添ったもの。ニュアンスのつけかたも、アンダに似ている。繊細なものだ。
1963年の録音。
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