ジャンニ・ライモンディの題名役、プレートル指揮ミラノ・スカラ座、他の演奏による、グノー「ファウスト」を聴きました(1967年2月、ミラノ・スカラ座でのライヴ録音)。
11月7日の予習です。
このオペラは、ゲーテの「ファウスト」第1部を題材にしたもの。ストーリーはおおむね原作に則っています。
もちろん、印象が異なるところはあり、気がついたのは、ヴァランタンの決闘のシーンやラスト。原作では言葉の重量感があり、そのぶん驚くほどあっさりしている。それに対し、音楽はじっくりと引き延ばしている。これがオペラ化の醍醐味でもあり、こちらも味わい深い。
さて、ライモンディのファウストは、おフランスの香りが部屋に漂うかのよう。言語の響きについて「男性はフランス語、女声は北京語」が美しいと伝え聞きますが、なるほど、これは聴いて心地よい。歌声は気持ちよくまっすぐ。
メフィストの歌唱は鉄板。狡猾にして暴力的。それでいて、高貴でもある。ギャウロフに駄作なし、の記録はまだ続く。
フレーニは成熟した女の心情をしっとりと歌い上げています。毅然としていて、大地にしっかりと足を下ろしているよう。彼女は原作によればおおよそ14歳であろうとのことですが、フレーニの歌唱は二十歳を過ぎた淑女。浮ついたファウストに手籠められる女ではとうていない。それが、この演奏の面白さと言えましょう。「宝石の歌」はまさに珠玉。
プレートルの指揮は手慣れたもの、のように感じます。テンポといい強弱といい、違和感なし。
なお、有名なバレエ音楽は、オペラの中に配置されると冗長感が否めません。ゲーテ原作の魑魅魍魎な世界と比していかにも甘い。これはオペラから除いて単独で演奏されるのが正解ではないかと。
さて、11月7日の「ファウスト」上演はハイライト版。
題名役は先日神奈川県民ホールでカラフを歌った芹澤さん、新国の「真夏の夜の夢」に出演した河野さんがメフィスト、艶っぽい歌唱の加地さんがマルグリート。
ピアノの河野さんは、疾風怒濤にして摩訶不思議な世界をしっかりと支えることでしょう。乞うご期待。
ジャンニ・ライモンディ(ファウスト)
ニコライ・ギャウロフ(メフィストフェレス)
ミレッラ・フレーニ(マルグリート)
ロベール・マッサール(ヴァランタン)
ルイジ・アルバ(シエベル)
アンナ・ディ・スタジオ(マルト)
アルフレード・ジャコメッティ(ヴァルネル)
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