シュトゥット指揮ボーンマス・シンフォニエッタ/スカンジナビアの弦楽作品集宮台真司の「日本の難点」を読む。
宮台の著作は題名などをみると当りが柔らかそうに見えるが、けっこう難解である。そういうところは橋本治の評論と似ている。だから普段は近寄らないようにしているが、この本は近所の本屋の平台に平然と積まれていたので、つい油断して買ってしまった。
全体にやはり少し難解な部分があるが、密度が濃く読み応えがある。
以下は、環境問題についての記述。
「『温暖化の主原因が二酸化炭素であるかどうか』はさして重要ではない」。
「なぜなら、環境問題は政治問題だからです」。
実は日本は環境問題において過去に成功したことがあるという。
「1978年の日本版マスキー法は世界一厳しい環境基準のクリアを自動車会社に義務づけました。環境問題よりむしろ石油問題が動機づけを与え、日本は逸早く合意に至りました」。
「燃料価格高騰にも環境危機にも対応できるとして日本の小型車が米国市場を含めた世界中を席巻した結果、80年代の世界初の製造業グローバル化の勝利者になりました」。
この日本の成功例を世界各国はよく学んでいて、再生エネルギー開発の分野でその後ぐんぐんと力をつけていき、やがて日本をリードすることになる、というのが今の状況。
そんななかで二酸化炭素は主犯ではない、などといっても「『負け犬が、今頃になって何を言ってるんだ』というのが欧州各国の日本政府や経済界に対する冷ややかな見方」であるという。
世界はどこに行くのだろう。
ニールセンの「小組曲」のすがすがしさは環境問題の生臭さとは対極にある。
弦楽合奏による3つの曲からなる小品。ひんやりと冷たくて清浄な空気が横溢していて、体感温度がいくぶん下がるように感じる。今のような季節にピッタリだ。
彼の作品では交響曲よりもこの曲を第一にとりたい。
特に好きなのは3曲目の真ん中のメロディー。ちょっと甘口の白ワインの味わい。ハリウッド的メランコリーもたっぷり含んでいて、つまみなしで何杯もいけてしまう。
ボーンマスの弦は雫が迸り落ちそうなくらいにみずみずしい。
1994年5月31日-6月1日、ボーンマス、ウィンター・ガーデンでの録音。
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