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バレンボイムのベルリオーズ「ベアトリスとベネディクト」

2009.05.16 - ベルリオーズ

berlioz

ベルリオーズ「ベアトリスとベネディクト」 バレンボイム指揮パリ管弦楽団、他


養老孟司とテリー伊藤の「私はオバサンになりたい!」を読む。
出るべくして出た、ふたりによる対談。
有史以来、この世界にはいろいろな人種が生まれてきたが、ニッポンのオバサンこそが最強の人種だという。地球が滅んだとしても、オバサンは必ずどこかで生きているだろう、と。
真偽は定かではないが、この説に共感だ。まったくもって、オバサンは強い。日常生活でしみじみ感じている。多くは語るまい。
この強さを、みんなで分かち合おうぜ、というのが本書の趣旨であるらしい。
そのオバサンの中でも、最強であるとふたりが推したのが、扇千景。決断力、明るさ、透明さが抜群だったという。
当時は国交大臣だったわけだが、国会答弁を実際に作成する国土交通省の局長クラスのヒトは、面倒なことを我々に任せてくれるからやりやすい、と言っていたらしい。
とにかく、トップは細かいことを気にせず、バッサリ決断。
間違えたときは、下が訂正すればいいだけだものね。


「ベアトリスとベネディクト」の全曲を聴くのは始めて。どういった話なのか全くわかっていないが、序曲には昔から馴染んでいる。
クリュイタンスの指揮によるものを、こともあろうに毎朝聴いていた。
この曲と「ベンヴェヌート・チェッリーニ」、「ローマの謝肉祭」を一組にして、出勤前に聴いていたのだ。
会社生活一年目、まだまだ血気盛んなころだったので、朝からこういう音楽をぶちかましても平気なのであった。

もともとベルリオーズは好きである。
トリッキーなメロディーと誇大妄想的なオケ編成、破天荒なジンセイ、そしてあの髪型。
いかにもロマン派という感じでいいではないか。
この序曲は、ベルリオーズにしては可愛らしい音楽である。ただ、随所にただならぬ霊感が迸っており、単体でも歴史に名を刻むべき曲だと思う。
バレンボイムの指揮が、意外といってはなんだけど、いい。引き締まったフォルムのなかに、鋭利な音響世界を色鮮やかに展開しており、ことにフルートとクラリネットの切れ味が抜群だ。機能美と幻想味を併せ持ったいい演奏であるし、後続を聴き進めて行くと、この序曲はまさに全体を象徴する演奏なのだということがわかってくる。

このオペラは2幕仕立て。相変わらず台本を読まない聴き方なので(このCDにはリブレットがついていない。仮についていても輸入盤なのでどちらにしろ読めない)、話の筋はさっぱりわからない。HPによれば、シェークスピアの「空騒ぎ」が原作であるらしい。話はわからないけれども、音楽は面白く聴くことができた。また、演奏もかなりいいようだ。
歌手ではミントン、ドミンゴ、コトルバスの三本柱がとても安定していて、声の状態もいい。力のある充実した歌をそれぞれ聴かせてくれる。
ことにいいのは、1幕のラスト近くでコトルバスによって歌われる「夜想曲」。都会の深い夜をおもわせるような、抒情と、少しの湿り気を帯びたしっとりといい曲である。
比較的理路整然とした1幕に比べると、2幕はおもちゃ箱をひっくり返したような雑然としたたたずまいである。
ギターとトランペットとタンバリンを伴って歌われるディースカウのアリアなどは、なにが起こったのかと思うくらいに唐突だ。いままでの流れとは全く異なる雰囲気が支配する。なんとも珍妙な音楽である。珍妙であるがために、とても印象に残る歌ではある。
この曲を含めて2幕については、曲と曲との連関も少々ぎこちない。まあ、そのあたりをひっくるめて、ベルリオーズらしいというか、個性を十分に楽しむことができると言える。
録音も良い。
ただどうかと思うのは、女性によるナレーション(ジャンヌ・モローを思わせる)がとても多いこと。
序曲含めた全35トラックのうち、16箇所もある。フランス語をわからない私には余計なので、バシバシ飛ばして聴いたことは言うまでもない。


イヴォンヌ・ミントン(ベアトリス)
プラチド・ドミンゴ(ベネディクト)
イレアナ・コトルバス(エロー)
ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(楽士)
ダニエル・バレンボイム指揮
パリ管弦楽団・合唱団

1981年の録音。
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