取引先のお客さんから聞いた話。
電車の中で、インド人らしき人と日本人が会話をしていた。どうやら、インド人らしき人が日本人に悩みを打ち明けている模様。
「ボクの息子なんだけどさ、すっかり和食に慣れてしまって、カレーが食べられなくなちゃったんだよね」。
なぜか可笑しい。
先日亡くなったアルブレヒトの指揮で、ブルックナーの交響曲8番を聴く。
ノヴァーク版第2稿によるもの(と言われても、ハースとの違いはよくわからない)。
これは恰幅のよいブルックナー。「これしかない」といわんばかりの中庸なテンポでじっくりと演奏している。
1楽章は展開部のホルンの響きがことに印象的。ほんわかとした軽みと、上等の絹のネクタイのようなしっとりとした質感がある。
2楽章の第1主題はスタッカート気味。攻めの姿勢が伺える。金管は勇ましく、弦のキザミも闊達。ティンパニの安定したロールが土台をしっかりと支えている。中間部はしなやかな弦が魅力だが、少しだけ現われるトランペットの適度に抑制の効いた弱音の響きが素晴らしい。フルートの音が濃い。
3楽章は弦楽器群が艶やか。潤いがあり、官能的でもある。ずっとこの音響にまみれていたいと思わせる。そして指揮者は、細かいところに音色の変化を入れてスパイスを利かす。
8分を過ぎたあたりは、ホルンと木管との掛け合いにおいて微妙なアクセントをまじえていてスリリング。
17分を過ぎたあたりでは、副声部のファゴットの音色が実に鮮明に浮き上がる。今までこの曲の演奏を少なからず聴いてきたが、これは初めてかもしれない。
件のクライマックスは重厚。トライアングルが控えめに鳴る。
終楽章も好調。ティンパニの打撃は強すぎず弱すぎず、皮の手触りがしっくり響く。第2主題の弦同士の掛け合いのところで、思わぬタイミングでの強音を響かせる。ここは驚かされた。
ラストはゆったりとしたテンポで堂々と終結する。
全体を通して、完成度は高い。精緻でありながら、温かい。
チェコ・フィルの厚く柔らかい響きは、ブルックナーにとてもよく合う。これは盲点だった。
1994年4月、プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホールでの録音。
収穫前のワイナリー。
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