山﨑武也の「凛とした人、卑しい人」を読む。
著者は茶道研究家にしてビジネスコンサルタント。本書のようなエッセイをいくつか出しているようだ。
文章がいい。端的にして論理的。とてもわかりやすいし、まっとうな見識がある。谷沢永一の文体に似ている。面識はないが、常識人であろうと思う。
「『勝負は時の運』であり、『損得も時の運』であると心得て、結果に関してあまり一喜一憂しないことだ。結果がプラスであれマイナスであれ、それは人生の一コマであると考えて、淡々たる姿勢に徹してみる。自分がベストを尽くそうとしても、結果は必ずしもベストにはならない。自分にはできることしかできない、と多少は開き直ってみることも必要だ」。
バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの演奏で、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」を聴く。
このディスクには、ナレーション有無の両方が収められている。どちらも演奏そのものは同じみたいだ。ナレーションは、Henry Chapin。
最初に聴いたときは少女かと思ったが、名前からすると男の子であろう。なんとも可愛らしい声。なので、こちらをとる。
それにしても、1960年代前半のニューヨーク・フィルは素晴らしい。どの楽器もいきいきとしている。同時代のシカゴやフィラデルフィアと並んで、世界のトップクラスであったろう。
70年代の後半のころ、何人かの音楽評論家たちが「バーンスタインがニューヨーク・フィルを下手にした」というようなことを言っていた。その当時はこちらも若かったからそれを鵜呑みにしていたが、80年代にメータと来日して聴かせたワーグナーなどはたいそう立派なものだったから、評論家たちの意見は眉唾ではないかと思っていた。
ただ、いまはどうか知らない。
この演奏では、どのパートも雄弁に快活に鳴っていて気持ちがいい。
好みでは、ハープのヴァリエーションが気に入った。ハープを聴いてうまいと思うことはなかなかないが、ここは問答無用にうまい、としか言いようがない。
トランペットも闊達。小太鼓のリズムに乗って、音は軽やかに飛翔する。
トロンボーンとチューバは厚い響きを聴かせてくれる。
ゴリゴリとした打楽器の変奏もめっぽう面白い。
ラストは登場人物が総出で豪壮に、自信に満ちあふれた明るい音色で圧倒してくれる。
1961年3月、ニューヨーク、マンハッタン・センターでの録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR