クレンペラーのフランク「交響曲」を聴く。
これもまた先日のマッケラスのモーツァルトのように大きな期待を抱かないで聴いたのだが、素晴らしい。
クレンペラーの演奏をそう多くは聴いていないが、恰幅がよいわりに透明感のある演奏をする指揮者だと感じている。マーラーの2番、4番、「大地の歌」、ベートーヴェンの9番、ブルックナー、メンデルスゾーンなど。それらはいずれも(ニュー)フィルハーモニア管とのものだから、オケの特性も加味してのイメージだ。ウイーン・フィルを振ったベートーヴェンやシューベルトは、重厚と言ってもいいかもしれない。
このフランクでは、ニュー・フィルハーモニア管を振っているから、遅いけれども重くない演奏になっている。ヴァイオリンの対抗配置も効いているのだろう。
1楽章は、ゆったりたっぷり。左から聴こえてくるゴリゴリした低弦の音が頼もしい。管楽器は常時舞台の前面で踊る。特に、オーボエ、ファゴット、フルート、ホルンの響きは何かに確信をもったかのように力強く響きわたる。右から聴こえるヴァイオリンが瑞々しい。
副声部がとにかくよく聴こえるのだ。結果としてこの楽章は、今までこの曲に対して抱いていた、重くて暗いイメージとは、少し異なる演奏だ。
2楽章は、なんといってもコールアングレが主役。この演奏でも光っている。ただここでは、伴奏というか、周囲の音たちの存在感がむしろスゴい。冒頭からの弦楽器のピチカートから、ホルンのソロ、弱く抑えたトランペットのうねる響きの生き生きとしていること!
トリオでは弱音器を使用した幻想的なヴァイオリンが核となり、慌ただしくも愉悦の音響世界を醸し出す。
終楽章は勇壮で明るい。
やはりテンポはゆっくり目。じっくりと歌わせる。第1主題で、副声部のトランペットのスタッカートをこれだけ響かせた演奏は他にあるだろうか?
ラスト近くの、2楽章の回帰のファンファーレは輝かしい。これを聴いたら、どこまでも遠くへ行けそうだ。そのあとのハープの響きは、蕩けるように官能的。
全体を通して、楽譜を捲る音がちらほら聴こえる。生々しくて悪くない。
1966年2月、ロンドン、アビー・ロード・スタジオでの録音。
海辺。
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