ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団の演奏で、ニールセンの「アラディン組曲」を聴く。
これは当初、上演に2晩かかる大作であるデンマークの詩人アダム・エーレンシュレーガーの劇「アラディン」に音楽をつけるというコペンハーゲン王立歌劇場の依頼により、ニールセンが応じ、1919年に完成した音楽。上演の際に、演出家が音楽をカットしたり順番を変えるという蛮行に腹を立てたニールセンは、自作としての発表を禁じた。後日の1925年に、これらの音楽を演奏会用に再編成したのがこの組曲。
曲数といい、全曲で20分強の長さといい、いろんな民族の舞踏曲があるところといい、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の組曲に似ている。おそらく影響を受けたのだろう。
1.祝祭行進曲
エスニックな響きは、目隠しで聴いたらニールセンとはわからない。エーテボリ響の厚みのある音色に舌鼓。
2.アラディンの夢と朝霧の踊り
同じ作曲家による名作「小組曲」のような幻想味がある。艶やかな弦楽器がとても効果的であり、これは全曲を通じて一貫している。
3.ヒンズーの踊り
霧の中から浮かび上がる寺院のように神秘的。オーボエとファゴットのソロがキリッと凛々しい。踊りというには、いささか大人しい音楽ではある。
4.中国の踊り
たっぷりとコクのあるリズムに乗って、木管楽器が飛翔する。メランコリックではあるが、東洋を感じさせるものではないかな。これを中国とは、日本人のワタシには思えないが。
5.イスパハンの市場
ストラヴィンスキーの「ペトルーシカ」を先取りしたような音楽。複数のメロディーが一度に鳴らされている。わらわらした佇まいはまさに市場。ただ、調性は同じなのかな?
6.囚人の踊り
組曲中、唯一荒々しい。囚人の場面だからか。題名と音楽から映像が思い起こせそうなところは、映画音楽のよう。
7.黒人の踊り
激しいリズムで始まる。手触りは、ボロディンとかR・コルサコフの管弦楽曲に似ている。エーテボリのマッシヴな響きがいい。
1995年5月、スウェーデン、エーテボリ、コンサート・ホールでの録音。
スワン河。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR