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ヒコックスのディーリアス「フロリダ組曲」

2008.02.28 - ディーリアス
delius


ディーリアスがフロリダにやって来たのは1884年のことで、22歳の時だった。父親の命令で、農場経営の勉強のためだった。
肝心の勉強はそっちのけで、近くの町の音楽教師の影響もあって音楽三昧の生活を送り始める。
たまに農場に帰ってきたかと思うと、農場労働者の黒人達が歌う歌をずっと聞いていたりで、まったく役に立たなかったらしい。
あきらめた父親は、今度は、彼をドイツにやり音楽の勉強をさせることにしたので、1886年にディーリアスはアメリカを離れることとなった。
この作品は、自分の住んでいたフロリダの思い出を音にしたもので、初演はライプツィヒのビアホール、聴衆はグリーグとディーリアスの二人だけだったという。
オーケストラへの支払いはお金ではなく、ビールだったらしい。
ホントであってほしい、いい話である。

曲は、4つから成っており、フロリダの1日を描いている。

1.昼
少し高い「原始霧」で始まる。オーボエからフルートに引き継がれてゆくメロディーがなんともはかない。触れたら壊れてしまいそうに繊細である。弦で奏でられるロディーはあたかもNHKの大河ドラマ風であり、わかりやすい。途中で顔を出すピッコロとフルートの旋律はチャイコフスキーのバレエ曲を思わせる。

2.川のほとり
あまり大きくなく、舗装されていない川のほとりを歩く。空は雲に覆われているけれど、時折差し込んでくる陽の光がほのかに眩しい、といった風情。気持ちのいい散歩道である。

3.落日
フルートとオーボエの音が下降するところは、まさに落日だ。ここでも空気はひんやりとしている。
やがておとずれる、寄せては返す大波小波。大太鼓がズシンとすきっ腹に響く。

4.夜
「原始霧」からオーボエのソロをへて、ホルンの合奏にいたる序奏部は、題名を知らなければ朝露したたる早朝の情景だと思う。その後、空気はだんだんと密度を増していって、たゆたう弦の波にハープがポロンと重なるところにきて、夜の帳を感じるのだ。

ヒコックスとボーンマスのオケは、録音のせいもあるのか、ふくらみや潤いに欠けるけれど、そのかわり研ぎ澄まされて引き締まった響きを聴かせる。南国というよりも北の香りがするように感じた。
でも、ビールのうまさは変わらない。
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