ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィルの演奏で、ストラヴィンスキーの「火の鳥」(1910年原典版)を再び聴きました(1975年1月、ニューヨーク、マンハッタン・センターでの録音)。
「火の鳥」は全曲に限る。なぜなら、「火の鳥の魔法にかかったカスチェイの手下たちの踊り」から「カスチェイの凶悪な踊り」にかけてが大きな山場だと思うから。乱舞するマリンバを始め、登場する楽器がこぞって躍動し劇的効果を上げていて、手に汗を握らないではいられません。「手下たちの踊り」は組曲版では省略されているので、これを味わうことができないワケですね。
チャイコフスキーのバレエ音楽もそうだけど、全曲を演奏会用の組曲にまとめることは苦肉の策だろうし、ある意味妥協の産物なのだろうと推察します。
ブーレーズは後年にシカゴ交響楽団と「火の鳥」全曲を再録音しています。これは、港区あたりにそびえ立つ超高層ビルのような威容を感じる演奏。スマートだし、技術的な面ではツッコミどころが見当たらない。でも、面白さではニューヨークを取りたいと思います。音がいい意味でささくれ立っていて、はちきれんばかりの生命力に溢れている。火の鳥もカスチェイも、眼前で踊っているよう。林檎と戯れる王女のシーンは、スピード感に溢れていて気持ちがいい。オケはとても巧いし、個人技に秀でてもいる。
この曲の名録音のひとつだと思います。
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